往復書簡・映画館の話をしよう「映画館と匂い①」(山口雅)
大浦さん、お返事ありがとうございました。
トイレから上映中の場内へ戻ってきた時の、「映画が大きい!」とびっくりする感覚は分かる気がします。そして逆に「映画が小さい!」と驚く瞬間もないですか?
前方から再入場してきた時と、後ろの方から入った時の、単なるスクリーンとの距離の違いかもしれないんですが、それまで一心に埋没していたはずの巨大なスクリーンが四角に切り取られ、ちんまり世界が収まってる事実に戸惑うことがあります。
いずれにせよ現実にいったん触れてしまうと、再び映画に慣れるまでに時間を要しますね。やっぱり上映中にはなるべく席は立たずにいたいものです。
さて、今回は「映画館と匂い」でしたね。難しいお題です・・・
時々「隣の人の香水がきつくて映画に集中できなかった」みたいな話を耳にすることがあります。でも私は匂いにあまり敏感ではないようで、そんなふうに思ったことが一度もないんですよ。食べ物の匂いも全く気にならない。みんな鼻がいいんだなあと思います。私は繊細な人間ではないらしい。
匂いに敏感な人は、映画館ごとに違う匂いを感じたりするのでしょうか。私は残念ながらよく分かりません。エアコンのカビ臭さはたまに感じることもありますが、それが我慢できない!と思ったこともないです。
館内に入った時の「ポップコーンのバターの香り」も、実はあまり気にしたことがないんです。おいしそうな匂いは確かに食欲をそそりますが、それは別に映画館だけに限ったことじゃないしなあ。
ちなみに韓国の映画館では、ポップコーンやポテトなどに並んでイカ焼きが売られてるんです。シネコンでイカ。そりゃ匂いが大変なことになるのでは?とお思いでしょうが、それが意外と大丈夫。音も出ないし、人気の定番メニューとして若者も普通に食べてます。面白いですよね。
匂いといわれて思い出すのは、8年ほど前にシネマスコーレで行われた「人力4DX」上映で、映画の最中に芳香剤のスプレーをシュッと吹きかけられた時。4DXのシステムをスタッフの力だけで実現しようという画期的かつ衝撃的かつ狂気的な企画でしたが、暗闇の中で急に漂ってきた匂いは際立って記憶に残っています。本物の4DX上映館にも行ったことはありますが、匂いの記憶に関しては完全に人力の勝利。強烈に覚えています。
匂いは記憶と直結していると聞いたことがあります。脳の海馬に直接働きかけるのが嗅覚だそう。声は忘れても、匂いは忘れにくいのが人間だとか。
大浦さんはきっと映画館の匂いについて強い思い出があるんだろうと予想してますが、どんな話が聞けるのでしょうか。楽しみにしてます!