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往復書簡・映画館の話をしよう「映画館とチケット②」(山口雅)

チケットのお話、ありがとうございました。
並べられたチケットたちの写真、かわいいですね! 文字印刷だけの機械的なチケットは味気ないと思っていましたが、こうして並ぶとそれぞれに個性があり、案外かわいいなと思いました。

しかし! 私は「チケット捨てる派」です。
何年か前に、もうこれからは全部捨てようと決め、どんどん捨ててます。

以前は「チケット捨てられない派」でした。
数年前までは服のポケットから半券がざくざく出てくる状態でした。映画をよく見る人にありがちかもしれません。上着、ズボンやスカート、カバンの外ポケット、内ポケット、ポケットと名の付くあらゆる袋から必ず映画の半券が出てくる。本当にどこからでも出る。数年前のある日ふと、そんな自分にうんざりしました。半券はすぐ捨てよう!と決意し、今に至ります。

それよりももっと以前は「チケット取っておく派」でした。
とくに音楽のライブチケットが捨てられず、今もまだ多少あります。
昔のチケットは現在のような文字だけのものではなく、絵柄が入っていました。手元に残る半券に日付とタイトル、写真がデザインされていて捨てる気になれず、ずっと大事に保存していました。それがいつしか文字だけの印刷に変わり、愛着は薄まりました。現在も前売券など、絵柄が入ったチケットはやはり捨てにくく、とってあるものがいくつかあります。

チケットというのは「この日この時、確かにここにいた」という証拠ですよね。忘れた頃に取り出して、そういえばそうだったな、と思い出に浸れるアイテムです。
そして前売券というのは「その日その時、そこに行く予定」という約束手形です。これまたワクワクする仕掛けであると思います。

コロナ禍の「ミニシアターエイド基金」で、寄付すると指定した映画館のチケットがもらえるというリターンがありました。私も参加し、指定映画館は「シネマ尾道」にしました。必ず使う近くの映画館でもよかったのですが、シネマ尾道はあこがれの映画館のひとつだったので、これを機に行けるかもしれないと思ったのです。結局、行くことは叶わないまま使用期限を迎えてしまいましたが、「シネマ尾道に私のチケットが置いてある」と考えている期間は、本当にワクワクするときめきの時間でした。

今、手元にあるチケットに、「ご使用の日まで有効」と手書きで書かれた大阪のミニシアターの未使用招待券があります。10年以上前に映画を見に行ってあれこれたくさんお話し、劇場でいただいたものです。現在は運営体制も変わったようで、それをくれたスタッフさんもいません。今さらこのチケットを使うことはないのですが、捨てられません。
あの日あの時、確かにそこにいたという証拠の一枚であると同時に、約束手形の一枚でもあるという、私には特別で大切なチケットです。


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