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往復書簡・映画館の話をしよう「子ども時代の映画館③」(山口雅)

大浦さんの初めての映画館体験のお話、拝読しました!
4歳で観た映画タイトルがちゃんと言えるんですね。すごいなあ。
映画の内容そのものより、赤かった風景やトモちゃんと会ったことの方を覚えているのは、分かる気がします。子どもの頃の記憶は「旅行先で食べたアイスしか覚えてない」みたいなことが多いですよね。

私にも「旅先のアイス」のような映画館の思い出がひとつあります。嬉しかったから覚えているわけじゃなく、ただただ強烈だったのですが。

前にも少し書きましたが、うちの父親はごくたまに、家族全員を映画に連れていくことがありました。いつも父自身が観たかったのであろう映画で、アニメなどに連れていってもらったことは一度もない。子どもには内容的にちょっと難しいものばかりでした。当時のおぼろげな断片から「多分これだったのかなあ」と探し当てたりしています。

その日、見に行ったのは多分、『遥かなる走路』という映画ではないかと思います。佐藤純彌監督、脚本は新藤兼人。トヨタ自動車の創始者を描いた劇映画で、キャストもそうそうたるもの。ですが、残念ながら内容は記憶にありません。強く印象に残っているのは、本編ではなく、劇場でかかった予告編なのです。

その予告編のタイトルは『震える舌』。
もう、もう本当に怖かった! 当時、心の準備はゼロだったはず。座席で凍り付きました。予告編なのでほんの数分ですが、あの唐突な恐怖はまざまざと蘇ります。
幼い女の子が「おもちゃのチャチャチャ…」を口ずさむ場面から始まり、スクリーンの大画面に映し出される女の子の悶え苦しむ姿、響き渡る叫び声。
完全にトラウマです。少女が血にまみれた姿を、眠れない夜の布団の中でその後も何度思い出したことか・・・。いまだにこのタイトルを聞くとビクッとします。

これが世間的にも「トラウマ映画」として有名な作品だと知るのは、かなり後のことです。現在は配信もあるようで、一度きちんと観てみればむしろ楽になるのでは、とも思いますが、いまだに怖くて観れません。
今もこれを書いているだけで、体温がちょっとだけ下がります。
大浦さんは観たことありますか?

***
次回のお題ですが、「映画館で寝ること」でお願いします。
前回、大浦さんが書いていた「映画館でお母さんが寝ていて衝撃を受けた」という話が気になりました。映画館で寝た経験がない人はいないのではないか? と思う私ですが、劇場スタッフでもある大浦さんは、寝ているお客さんをどう思っているのでしょう。ぜひ教えてください。


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