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往復書簡・映画館の話をしよう「映画館と健康②」(山口雅)
大浦さん、お返事ありがとうございます。
大浦さんもちょうど病み上がりのタイミングだったんですね。回復されて何よりです。大浦さんの頭痛も並ではないようですね、要注意ですよ。
私も、偏頭痛というありふれた名前の病気が思いのほかキツイことに驚いて不安にもなりましたが、仕方ないので上手に付き合っていけたらいいなと思っているところです。
なんかね、頭痛を誘発する大きな一因は「光と音」なんですって。
それ、まさに映画館じゃないですか? なんてことだ。
でも先日、どうしても観たかった『トワイライト・ウォリアーズ』を観にドキドキしながら出かけ、あの激しい内容に平気だったのでかなり安心しました。これからも気にせず行こうと思います。
それにしても、自分が「いつ起きるか分からない発作」的なものを抱えてみて、初めて分かる気持ちがたくさんありました。
昨年話題を呼んだ『夜明けのすべて』という映画がありましたよね。原作小説も人に勧められて読み終えたところです。主人公たちはまさに「外から見えづらい発作」を抱え、行動を自ら狭めて生活していました。よく分かります。そしてそういう人は、実はとても多いのではないかとも。
映画館に通っていると、いわゆる「常連さん」が分かってきます。名前や職業は知らないけれど、よく見かける人。
そういえばあの人、最近見ないな、とふと思うことも時々あります。喫茶店やバーがそうであるように、話したことはなくても知ってる人。
引っ越したのか趣味が変わったのか、それとも病気なのか入院したのか、こちらが知る手立てはないまま、姿を見なくなる人がいます。
ましてや高齢化してきているともいわれる映画ファン、体の不調で通えなくなる人はたくさんいると思われます。
劇場で働く大浦さんは、きっと日常的に感じていることでしょう。
「あの人が好きそうな〇〇の新作だけどな・・・」とか、劇場スタッフさんは頭をよぎったりするのでしょうか。なんだか切ないです。
でもきっとその人も「あの新作やってるな。悔しいけど元気になったらまた行くぞ!」と今日もベッドの中で思ってるかもしれませんよね。
「体調が悪くなった時はいつでも相談して良い」という映画館。
そんな映画館があったら、安心する人は相当多いんじゃないでしょうか。
トイレの片隅にでもそんな小さな注意書きがあったら嬉しいと思います。
というかそもそも、相談しちゃいけない映画館なんてないはずですよね。特に小さな映画館では。
なぜ相談できない、だから行かれない、と思ってしまうんでしょうか。映画なんてしょせん娯楽であり、真っ先に「具合が悪いなら来るな!」と言われてしまいそうな場所だからでしょうか。
映画館が寄りどころになってる人、案外いると思うんだけど。
そこへ行けないことで心が塞がってしまう人、案外いると思うんだけど。
気軽に、気楽に、映画館へ行きたいものです。しょせん映画ですから。