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往復書簡・映画館の話をしよう「映画館とトイレ③」(大浦奈都子)

山口さんの「映画館とトイレ」論、とてもおもしろかったです。

そもそもなぜ、私たちはこんなにも映画中のトイレを恐れているのか?という話題。中断はなるべくしたくないけれど、わたしも寝てばかりだし、他の人が席を立っても嫌な気持ちになんてならないのに・・・

山口さんのおっしゃる「白々しい外の世界に、唐突に引きずり出されること」に激しく納得しています。席を立ち、暗闇から明るい外の世界へ出た時のあの、現実に戻ってしまった感。まるで別世界!空気の質の違いを感じます。

そして外界(トイレ)からまた、暗闇の中スクリーンに映画が映し出せている光景に体を馴染ませるのにも時間がかかりませんか?
扉を開けてスクリーンが現れた時「わぁ!映画が大きい!」みたいになるんですよ。大きい顔や大きい声が襲いかかってくる感覚で、ちょびっと怖い。スクリーンの威力を思い知る瞬間です。

さてさて、前回予告してしまったトイレ大洪水事件「映画館とトイレ(お仕事編)」です。

シネマスコーレのトイレは、男性用と女性用に分かれておりまして、女性用が受付の真後ろに1つだけある構造になっているんですね。1日の来場者数が少ない小さな映画館です。さらに男性客が多めです、残念ながら利用頻度はそんなに高くござぁません。

それがたまのヒット映画、さらに女性用を使う方が多くいらっしゃる土日は一気に使用率が上がります。結果、それなりの頻度でつまっちゃうんですよ。これを書くまで「なぜいつも忙しい時に限って詰まるんだよ!呪いか!?」なんて思っておりましたが、よく考えてみたら単純に使用頻度が上がるからじゃないか!

ですが当館代表の木全と支配人の坪井はスッポンが大得意。いつも心配になるくらいの勢いでスッポンを激しく使い、息切れしながらつまりを直します。尊敬。

そんなスッポンプロフェッショナルの2人も敵わない事件がありました。

今年の2月。
とある大ヒットドキュメンタリーシリーズを上映しました。シリーズ1作目の完結編とスピンオフ的な新作の2本。間の休憩時間はいつものように10分。お客さんは女性が多く、上映2日目には監督の舞台挨拶がありました。この時点でトイレの大混雑は予想されています。

そう。この舞台挨拶の日に限ってトイレが壊れちゃったんですよ。
プロ2人の格闘の末敗れ、修理屋さんに電話。幸運なことにすぐに来てくれました。

しかし、修理中に舞台挨拶が終わり、あの狭いロビーは大混雑。パンフレットを買い求める大行列ができています。トイレ故障中という惨事を伝え、謝り、パンフレットを売り、謝り・・・しかし皆さん、ものすごく協力的で、「えー!」と言いつつ笑いながらどこかのトイレを借りに走って行きます。なんてありがたいお客様なんだ・・・

と、感動していたのも束の間。修理屋さんが一度工具を取りに外に出たら、ロビーの大混雑で戻れなくなってしまいました。ちょうど水を吸い上げる作業をしていた途中だったのでしょう。

あれ?足冷たいぞ?と思って下を見たら案の定、トイレから水が溢れ出ています。人がギリギリ3人入れるほどの受付はすぐに水浸し。しかし止まらないパンフレットの列。足びたびたのなか、顔面蒼白でとにかく列を捌きます。「お兄さーーん!水溢れてます!」と呼びに行けたのはようやく映画が始まろうとする時間でした。

永遠に感じられた10分間。しかしですね、信じられないことに、ほとんど時間に遅れることなく上映は始められたのです。あまりの事態に脳がヒリヒリしたのと、足が冷えて体がヒエヒエになった出来事でした。

以上、「映画館とトイレ」完結!

では次のお題です。
「映画館と匂い」でお願いします。ポップコーンの香りがしがちな映画館。匂いの記憶で、何か思い出すことはありますか?
どうぞよろしくお願いします!

水浸しになった受付はこちらです。

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