往復書簡・映画館の話をしよう「映画館と匂い②」(大浦奈都子)
山口さん、「人力4DX」のお話、ありがとうございました。
懐かしいなぁ。あれね、レモンの香りをシュッシュッと振りかけていたんですよ。それ以外にもまぁたくさんのことをしたものですから、お客さん咽せていましたよね。コロナ前のシネマスコーレを象徴するような、恐ろしい企画だったなぁ。
そうそう、話の順番が前後しますが、「映画が小さい!」という感覚もよくわかります。後方の扉から入ると、大きい劇場に発光する小さな四角が浮いている、みたいな光景が広がりますよね。スクリーンと観客の距離によって映画の印象も変わってくるのかもしれません。
さて、「映画館と匂い」。
迷いに迷い、変なお題を出してしまい失礼しました・・・。しかし匂いがほぼ気にならないという山口さん、羨ましい限りです。“時々「隣の人の香水がきつくて映画に集中できなかった」みたいな話を耳にすることがあります”ってそれ、まさにわたしの話なのですから。
どうやら嗅覚が敏感なわたしは、香水、食べ物、体臭・・・に振り回されて生きています。先日、珍しく混んだ回に行った際に隣の人がポップコーンを食べていたんです。最近のポップコーンがあれだけ匂いが強いのか、限定の味だったのかはわかりませんが、その強い塩気で頭痛が起きました。隣の人は全く悪くありません。強い匂いで頭痛、わたしには日常茶飯事なんです。
やはり映画は空いている回を選ぼう!と決意を新たにしたのでした。
しかし香水も体臭も、人間って自分の香りは鈍感になるって言いますよね。なかなか自分じゃ気付けない。映画館で働くわたしは季節によって匂いと格闘しています。
夏はやはり、汗。上映が終わり、扉を開けた瞬間モワッと塩分強めの酸っぱい香りが立ち込め、次の上映が始まるまでの10分間で消臭スプレーと大換気大会。コロナ真っ盛りのあの時期も、マスクから鼻を出してクンクンクンクン。コロナ禍以降特に、室内は「清潔であること」が重要視されるようになりましたよね。「冷房の温度、1度下げた方が良いか・・・?」など、劇場の温度をどう保つか、匂いもジャッジポイントの1つになっています。
最近はようやく涼しくなりましたが、ここで新たな困りごと。香水です。こちらも劇場の扉を開けた瞬間、香水の香りが満ち満ちていることがございます。秋って香りが残りやすい季節なのでしょうか?最近多いのですよ。
映画館でのマナー問題が話題に上がりがちになってしまった昨今、匂いも地味〜な困り事としてちょくちょく登場するのです。しかし、嫌な記憶ばかりじゃございません。
シネコンならエスカレーターを上がっていくにつれポップコーンの香りが濃くなっていくあの感覚は好きですし、古い建物にある映画館も独特な香りがして、映画を観に来たぞ、という体感が得られます。ナゴヤキネマ・ノイさんに初めて行き、階段を上がった時のあの懐かしい匂いに、涙腺を刺激されました。
これ、嗅覚が敏感なわたしだけなのでしょうか?
まだスコーレで働く前のこと。若松孝二監督特集や大島渚監督特集に通うと、毎度年配の人がおかきをぼりぼり食べていました。スコーレで見た映画の強烈な記憶は、その作風とは裏腹に、おかきの匂いと共にあるのです。今ではスコーレ、お食事禁止になりましたけど。こんな風景も、映画館の思い出のひとつです。
次、山口さん書くことあるのか心配です!笑
最近映画館について考えていることでもなんでも、自由にお話ししてくださいませ!