往復書簡・映画館の話をしよう「子ども時代の映画館②」(大浦奈都子)
山口さん、子ども時代の映画館のお話、楽しく拝読しました!
映画館の原体験は映画館ではなく外!良い話だなぁ。
暑い夏の日、ぎゅうぎゅうに座った子どもたちがゲラゲラ笑っている姿を想像するだけでワクワクします。今でこそ、映画館はきっちりと整えられた空間で快適に観る場所になったけれど、昔はもっと大らか、というか大雑把な魅力もあったように思います。
祖母の話や映画館の本で、たくさんの人がひしめき合っている熱のこもった空間だったというエピソードをたくさん聞いて、一度でいいから経験してみたかった!と、ないものねだりの空想に耽っています。
それと、山口さんの家族はお父さん主導で映画館へ行っていたのですね。
わたしの場合、幼いころ父親と映画を観た記憶がありません。いつも、母、兄、姉とわたし。おそらく父親と一緒に映画を観たのは、高校生になってからじゃないかなぁ。理由を尋ねたら「お父さんは野球で忙しかったから」とか申しておりました。
初めての映画館体験ですが、わたしの記憶が正しければ1995年、4歳の頃に観た『耳をすませば』です。
お姉ちゃんに手を繋いでもらいながら初めて入った劇場、賑わう客席を見上げながら階段を上がると、近所に住むトモちゃん一家も来ていました。わたしが初めての映画館を覚えているのは、きっとトモちゃんと会ったからだと思います。
『耳をすませば』を4歳で観て、どう思ったのだろう。今でも好きな映画ですが、そのとき面白いと思ったのか、その後何度もテレビで観た記憶が重なっているのか、至極曖昧です。覚えているのは、映画館の景色が赤かったこと。きっと椅子が赤かったのだと思います。
あの映画館はなんという名前だったのだろう。家族に聞いても誰もわかりません。あの頃は街にいくつも映画館がありましたしね。
ということで、調べてみました。とんでもないサイトを見つけました。
「消えた映画館の記憶」
「岡崎グランド劇場」・・・そうだ!「岡崎グランド」って呼んでいた覚えがあります。懐かしい。大ヒット映画は外の階段に人がずらっと並んでいるのを、車の窓から見たなぁ。昔は映画館の前で写真なんて撮らなかったから、思い出の映画館の写真は持っていません。1枚でも残っていたら今のわたしには宝物になったのに。
その後の印象的な映画館体験はというと、1998年の『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』。これに大興奮したわたしでしたが、横で母が「ああーよく寝た!映画館はよく寝られて良いね、お母さんまた来たいわ」と満遍な笑みで言い放ったのです。
衝撃でした。
こんな面白い映画で寝ていた!?も、もったいない!映画館で寝るなんて!
唖然とした小学1年生のなっちゃんでしたが、それと同時に「ああ、お母さんって疲れているんだな」と、母の新たな一面を見た瞬間でした。
きっと、日々子育てで忙しい中で、不意に与えられた休息の75分だったのだろうな、と今なら理解できます。映画館ってそういう場所でもあると思うのです。
さて、山口さんの次のお手紙はついに映画館の中に入るのでしょうか!楽しみにしています!