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往復書簡・映画館の話をしよう「旅先の映画館①」(大浦奈都子)
山口さん、「映画館と街」お返事ありがとうございました。
説明もなしに難しいテーマを出してしまって反省!
山口さんがおっしゃるように、いろんな角度から語れるテーマなので、もう少し考えがスッキリしてきたら第2回をやりたいです。
そして“映画館は映画を観る場所だけど、それ以外の何かを求めてそこに居続けるのかも”というお話、これから日々考えるべきお題をいただいた気持ちです。何か思いついたら、またお話しさせてください!
さて、新たなお題「旅先の映画館」ですね!
思い出深い映画館がたくさんあって、何を書こうか迷い、勝手に苦しみました。
「旅先の映画館」って2パターンあって、わたしの場合はほとんどが「意中の映画館へ行くための旅行」です。「旅先にたまたま映画館があった!」なんて、どんなに素敵だろうか・・・。
今回のお手紙は、初めて映画館を目当てに遠出したお話を書いてみようと思います。遠出・・・と言っても、行き先はお隣の三重県、伊勢市でした。
高校3年生、大学受験に合格した翌日、三重の伊勢進富座へ映画を観に行ったのです。いまだに信じられません。知らない地へ、スマホも持っていない時期にひとりきりで、超方向音痴&名古屋へ1人で行ったこともない出不精高校生が、目的地へ辿り着いたなんて・・・。
中学生のころ、映画が好きになりました。
でもその時期、我が地元愛知県の岡崎市に映画館はなく、映画館に行くには市外へ出かけなければなりませんでした。だから映画館で映画を観るって特別な時間だったんです。
あの頃は1回1回が本当に貴重で、映画を観た後はその余韻を何日も引きずって・・・というよりは、離れないように逃さないように、大切に引きずらせていたのだと思います。
漠然と「将来は映画の仕事に就きたい!かもしれない」なんて夢見ていたわたしに、ある日母が「映画館がテレビに出ているよ」と言いました。番組のタイトルは忘れてしまったけれど、三重の小さな映画館を紹介していました。それが伊勢進富座だったのです。
映画と、映画館に対する強固なこだわりを勝手に受け取ったわたしは、何故か、「大学受験が合格した次の日に進富座へ行こう。」と決意したのでした。
なんとか無事合格。沸き立つ思いで電車に乗り、確か伊勢神宮を見に行ったりもして、そして映画館へ向かいます・・・が、案の定・・・道が全くわからない。方向音痴を大発揮、ウロウロウロウロ大混乱。映画の開始時間は迫ります。
焦ったわたしは、勇気を出して通りすがりのおじいさんに道を尋ねました。
「へぇ、あの映画館へ行くの!」と驚かれつつ近くまで送ってくれ、心の中で「命の恩人」と泣きそうになりながら、ようやく映画館へ辿り着いたのでした。
緊張しながら入った受付で「高校生1枚」と言ったら、「高校生が来てくれるのは嬉しいなぁ」と言ってくれました。嬉しくてパニックになり、変な返しをしてしまったことを反省しながら、後ろの方の席を選びました。
一戸建ての映画館。映画を観せる、そのためだけに存在しているようなコンパクトな造りの劇場に広がる大きなスクリーンで、わたしの知らないタイの景色に目を奪われ、映画にどっぷり浸かりました。観た映画は、小林聡美主演の『プール』。照
その後、帰り道のことは、赤福を買ったことしか覚えていないんです。興奮していたのでしょうかね。
今思えば、あの時道を案内してくれたおじいさんと「映画が好きなの?」とか、「昔はよお行ったなぁ」とか話をしたのが、誰かと初めて映画館の話をした時間だったのかも・・・と気づいて、今、込み上げてくるものがあります。
旅先の映画館の話、楽しくていつまでも長く書いてしまいそうなのでこの辺で!思い出話の回でした。
山口さんのお話も楽しみにしています!
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おまけ。
前回書いていた「もしも果てしなく広がる田んぼや畑の中にポツンと一軒、小さな映画館だけがあるような街だったらどうか」という想像。ぜひ「テアトル石和」と検索してみてください。残念ながらすでに閉館していますが、心ときめきますよ。