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LIVING / 生きる LIVING(2023年3月31日劇場公開)
カズオ・イシグロは黒澤明の『生きる』をイギリスを舞台にして再映画化することが夢だったそうです。
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単なる再映画化ではなく、1952年のロンドンを舞台にして細部にこだわって当時の世相を含めて再映画化されていました。かなり気に入りました。
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ビル・ナイにあてがきをしてノーベル賞作家が脚本を書いただけあって、ケミストリーはバッチリ。本当にあの時代に生きていた公務員の感じがよく出ています。
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主人公が人生の楽しみを知る場面はあっさりでした。それは後半の仕掛けを生かすための脚本家の作戦です。
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そして、マーガレット役のエイミー・ルー・ウッドの明るさが太陽のごとく映画を照らします。彼女が黄色い服を着ているのは小田切みきが演じた小田切とよ役へのオマージュでしょう。
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感心したのは、映画のルックがまるで1950年代に製作された映画のようなんです。あの時代の映画はその舞台となる街の俯瞰ショットから始まる映画が多いのですが、昔のニュースフィルムをリマスターしてその雰囲気を見事に醸し出すことに成功しています。
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ビル・ナイの演技はアカデミー賞主演男優賞受賞に相応しい演技なのは間違い無いです。受賞できるかどうかはわかりませんが。
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