NOSTALGIA / ノスタルジア
ナポリを舞台にした最も内省的な映画でしょう。
かつて暮らしていたナポリに40年ぶりにエジプトから帰ってくるフェリーチェ(ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ)。まず母親との再会時の悲しみが画面一杯に表現されます。
ストーリーも主筋は旧友オレステ(トマス・ラーニョ)との再会を巡り展開。フェリーチェの行動動機がノスタルジアという仕組みです。
そのフェリーチェのノスタルジアからくる行動を時に支援し、忠告してくれるメンターがルイージ神父(フランチェスコ・ディ・レーヴァ)。シンプルな構造の物語。映画の質感はしっとりしています。
ナポリのリオーネ・サニタ地区はカモッラが支配する街。その中でルイージ神父は住民に寄り添い心の支えになるのです。ただ故郷を離れ40年も他所者だった主人公の故郷に居場所はないのです。
アカデミー賞イタリア代表として選出されたくらい、イタリアの地域性が活かされた意欲作には間違いないのですが、主人公のノスタルジアを観客が共有するにはもう少し描き込みが必要でした。