IL TRADITORE / シチリアーノ 裏切りの美学(2020年8月28日劇場公開)
こういう作品に出会う事があるから、映画館通いがやめられないんです。
英語タイトルはイタリア語原題と同じく「裏切り者」。
それを日本語タイトルでは「シチリアーノ 裏切りの美学」と大胆に意訳してます。その姿勢は大いに買いたいと思います。赤色の多用はちょっと too much です。
これがイタリアのオリジナルポスター。地味ですが本作を代表するスチール。
主人公トンマーゾ・ブシェッタが「パレルモ大裁判」で陳述をするスチールです。このシーンにピエルフランチェスコ・ファヴィーノが熱演するトンマーゾのプライドが表現されています。このためにスーツを新調するシーンまであります。
「パレルモ大裁判」、こんな裁判所見たことありません。ここのシーンを描いたことで『ゴッドファーザーPARTII』の公聴会のシーンを凌駕するマフィア映画の凄みを見せつけました。
後方には葉巻を燻らせながら、被告人のマフィア達が裁判中に罵声を浴びせるのです。オペラ劇場のようです。
もちろん血腥い殺しのシーンも沢山出て来ます。デス・カウントの数が半端ないです。
それから世に言われる「カパーチの大虐殺」のシーン、色んな殺しのヴァリエーションを映画で観て来ましたが、このシーンには度肝を抜かれました。
それからマフィア映画の大切な要素である「ファミリー」。ファミリー達の容赦のない運命に主人公の慟哭が響き渡るシーンには言葉を失いました。
マフィアの幹部は椅子に座った姿も絵になりますよね。『ゴッドファーザー』のドン・コルレオーネもそうでした。
マルコ・ベロッキオ監督。その名字は「美しい目」という意味。マフィアの本質を炙り出す確かな視点に支えられた美しく、凄みのある映画です。