糸 / YARN(2020年8月21日劇場公開)
映画館で散々予告編を見せられてきたので、「どうせまたお涙頂戴の安っぽい邦画でしょ」とたかを括っていたら、付けていたマスクが使い物にならなくなるくらい号泣していました。
菅田将暉と小松菜奈もその俳優としてのキャリアの頂点にある時にこの作品に巡り会えて良かったと思います。
それから、今までロクな映画に出ていなかった榮倉奈々が胸を張って代表作だと言える映画です。
二階堂ふみも友情出演(ということはノーギャラ)でした。
瀬々敬久監督作品であれば、もう1時間くらい話が膨らませられるくらいの魅力的なサブキャラを山本美月が熱演していました。
斎藤工の役がいちばんリアリティがありませんでしたが、メインの舞台の北海道と対比する意味で沖縄のシーンも不思議と印象深かったです。
函館空港に実在する「もしもしコーナー」のシーンでいくらでもお涙頂戴にできるところをあっさりと描くのです。この緩急自在な演出にやられました。
かと思いきや、何気ないショッピングモールでのこの親子の抱擁で残酷な時の経過を暗にわからせる実に憎い演出です。
このシーンを成立させているある想いは、実に切なくここは王道のメロドラマ路線を貫いています。時々ど真ん中に直球を投げ込んでもくるのです。
林民夫の脚本は時に冷静に平成史をなぞるように展開していきます。平成という時代への感慨を観客側に委ねたことも成功要因でした。
小松菜奈がこの衣装でスクリーンに登場したら、要注意です。どんなに堪えてもあとからあとから涙が溢れてきます。
それからもちろん、中島みゆきの『糸』の使われ方もとても効果的です。
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