8日で死んだ怪獣の12日の物語ー劇場版ー / THE 12 DAY TALE OF THE MONSTER THAT DIED IN 8(2020年7月31日劇場公開)
アップリンク京都で上映前に斎藤工と岩井俊二監督のトークショーのある回で観ました。トークショーも含め、大変興味深い映画体験でした。
劇場版は、当初YouTubeで公開された12篇の短編が元になっています。
そのメイキング、『2020年の五月物語』もYouTubeで公開されています。
トークショーもそれぞれの自宅から、映画に使われている同じ配信サービスと画面構成で現実と映画世界との境目が溶融していました。
予め募った質問に答える形式でしたが、斎藤工はトルストイの「芸術とはなにか」の中の一節を朗読。その言葉は心に残りました。
「芸術とは、一人の人が意識的に何か外に見えるしるしを使って、自分の味わった気持ちを他の人に伝えて、他の人がその気持ちに感染して、それを感じるようになるという人間の働きだ。芸術によって、同じ時代の人たちの味わった気持ちも、数千年前に他の人たちが通ってきた気持ちも、伝わるようになる。芸術は、今生きている私たちに、あらゆる人の気持ちを味わえるようにする。そこに芸術の務めがある。」「芸術とはなにか」/ トルストイ
岩井俊二監督は、「京都が暑いのは熱々怪獣がいるからだと思いますが、どう思いますか?」という質問に対し、「ファイヤーマン」を持ち出してファイヤーマンが焼き殺される回はトラウマになった、あの時代、「ウルトラマン」、「ウルトラセブン」、「タイガーマスク」の最終話はどれもトラウマになったと特撮・アニメ番組を小さい頃から見ていた体験を赤裸々に語っていました。
映画には、私が子供の頃大好きだったウルトラ怪獣がたくさん出てきて本当にうれしかったです。
「カプセル怪獣」というのはウルトラセブンが変身出来ない時に怪獣と戦う怪獣で、このようなカプセルに入っていてそれを投げると登場します。
これがウィンダム。映画の中では「灯台にも勝てなかった」と揶揄されています。
そしてアギラ。このカプセル怪獣については特に言及はなしでした。
最後はミクラス。このツノのカラーリングはスポーツギアのようだと岩井俊二監督。
のんの役名、丸戸のんですが、英語読みにすると「ノンマルト」です。
あのウルトラセブン屈指の名作といわれる「ノンマルトの使者」にオマージュを捧げています。その丸戸のんと共演をするのがペロリンガ星人。
斎藤工が飼っている「カプセル怪獣」は当初ウルトラセブンオリジナルカプセル怪獣かと思われていましたが、途中グドン(帰ってきたウルトラマン)。に変化するのです。
その後ガッツ星人(ウルトラセブン)に変化するのです。この辺り、ついて来れない観客が多いかもということで樋口真嗣が怪獣・星人解説を加えています。
このように説明するとまるでいい年した大人が怪獣ごっこをしている映画のようですが、正にそのような映画です。でも岩井俊二の演出が加わると叙事が叙情にメタモリフォーゼをするあの感覚がスクリーンを支配します。
2020年の夏をこの映画と共に思い出す日がきっと来ると思います。
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