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OMOIYARI : A SONG FILM BY KISHI BASHI / おもいやり:ア・ソング・フィルム・バイ・キシバシ

日本ではまだ観られる映画の本数も種類も限定的ですが、アメリカのパラマウントプラスをサブスクすると音楽ドキュメンタリーを配信しているMTVの作品も見放題です。

”おもいやり”という日本語が目を惹く

”おもいやり”は日本の独特のカルチャーだと自分自身のルーツを辿る過程で見出していくミュージシャンのキシバシ。一方、アジア人差別感情が渦巻き始めた今のアメリカ。政治的なメッセージをその音楽活動を通じて発信したことはなかったキシバシが「人生で初めて、これは声を上げなければ」と自ら監督(共同)までした渾身の音楽ドキュメンタリー。

日本人収容所の監視塔

12万人。全米10カ所に建てられた日本人収容キャンプにこれだけの数の日系人が強制収容された歴史については、山崎豊子の『二つの祖国』を通じて知ってはいました。ただキシバシ自らがその収容キャンプ跡を訪ね、当時の被収容者たちに話を聞いていく本作を観てあまりに屈辱的な事実に大きな衝撃を受けました。

バイオリンによる鎮魂

当時の日系人がどういう想いでいたかは第442連隊の活躍などから伝わって来ます。パールハーバー以降アメリカ人以上にアメリカ社会に多大な貢献をしてきた在米日本人たちがアメリカ愛国者としての態度を表明し不自由な囲いの中で必死に生きたことをキシバシがそのバイオリンの音色で鎮魂する場面は涙が止まりませんでした。

バイオリンの音が風に運ばれて

かといって、映画全体は暗い調子ではなくインタビューされる人たちは屈託なく過去の話をします。キシバシもミュージシャンとしての役割をよく心得ていて音楽が中心のドキュメンタリーにちゃんとなっているところに好感を持ちました。彼の音楽を聴くと元気が湧いてくるのもそのパーソナリティに負うところが大きいのかも。




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eigadays
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