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PADRE NOSTRO / 我らの父よ(2021年5月13日映画祭配信公開)

1976年「鉛の時代」のローマへタイムトリップしたような感覚になりました。

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父であり、警察副署長のアルフォンソ(ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ)がテロリストに襲われる出来事がトラウマになっている一人息子のヴァレリオ(マッティア・ガラーチ)のひと夏の物語。

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不意に現れたクリスティアン(フランチェスコ・ゲギ)がまるで幽霊のような立ち位置で観客を幻惑します。

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父親の圧倒的な存在感。家族を守るために、実家のカラブリアでバカンスを過ごすことにするのですが、そこにも護衛がついています。リアルティとファンタジーの境目がシームレスで実に巧みに映画世界に誘導されるのです。

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部下たちとトランプ遊びに興じる時も緊張感が漂います。マフィア映画のそれと同じ空気感。

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チョークで路面に描かれた死体と血の痕のポスターが示すように、父親は血生臭い世界に生きているのです。

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そしてカラブリアで衝撃の真実が明かされるという展開。ローマとカラブリアの美しいロケーションは少年二人の心情を上手く伝えています。そこに時折差し込まれる、テロ行為という現実が生々しさを伴って見事なコントラストをなしています。イタリア映画の伝統をハイブリッドに継承している作品。私にとってはイタリア映画祭2021の上映作品中ベスト。


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