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HARRIET / ハリエット(2020年6月5日劇場公開)

奴隷制度を題材にした最も新しい映画は、予想外にスタイリッシュ。主人公ハリエットの人生を通じて今の観客に奴隷制度について関心を持ってもらう為の映画。

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登場人物の相関関係を予め知っておくと、より理解を深める助けになります。

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ジョー・アルウィン演じる奴隷主ギデオンはグッド・ルッキング。卑劣漢な描写は控えめです。

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自由黒人(すごい呼び方)の女主人役ジャネール・モネイの雰囲気が何となく今風でした。

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時代劇としての衣装など、どのシーンでもかなり見栄がえよく、映画の印象が必要以上に悲惨に見えないようにしているのがわかります。

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黒人、女性、ヒーロー、そして実話。そういう要素を盛り込んだ上で映画の「ルック」を美しくして、今の観客に劇場に足を運んでもらう戦略の映画です。

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今までに自分が触れてきた、奴隷制度を描いた映画を思い返してみると『風と共に去りぬ』(イタリア語は VIA COL VENTO)がそのキッカケでした。

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今となって考えてみると『猿の惑星』も奴隷制度を想起させるSF映画でした。

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それから何と言っても、大ブームになったTVドラマ『ルーツ』。クンタ・キンテの悲惨極まる物語には心を打たれました。

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『ヤコペッティの残酷大陸』なども70年代らしい強烈な残酷描写で奴隷制度の恐怖を思い知らされました。

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スピルバーグの『アミスタッド』などはある事件を題材に悲惨さをあぶり出すという物語手法で観客に奴隷制度へ関心を持つように促します。

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アカデミー作品賞受賞作の『それでも夜は明ける』でもストーリーテリングで奴隷制度の不条理さを訴える作劇です。

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これらの映画やTVドラマを知らない観客には、ハリエットというスーパーウーマンを描くことが奴隷制度を知らしめる為の最良の手段なのです。

そういう製作意図を理解できないと、『ハリエット』は絵空事のようにしか思えない空疎な映画という感想になるでしょう。

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ハリエット・タブマンが、この眼差しの先にどういう未来を見ていたのか。その答えを知っている私たちが向き合うべき映画です。


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