DEKALOG DIGITAL REMASTER / デカローグ デジタル・リマスター版（2021年4月10日劇場公開）

1988年製作の伝説的作品がデジタル・リマスター版として劇場公開。

日本初公開時には「十篇の愛の物語」と宣伝されていたようですが、見直してみると全然愛だけの物語ではなかったです。

物語のテーマはむしろ人生でしょうね。それもかなり不条理な人生。思い通りにいかない人生こそ語るべき物語なんです。

デジタル・リマスター版として公開されるからには宣伝する方もより内容に肉薄して訴求をしなければなりません。その意味で「なぜ人は生きるのー？ままならぬ人生、それでもたしかに愛はそこにある。」というキャッチフレーズを考えたのでしょう。ただ某ノンバンク金融のCMで散々聞かされた言葉はこの伝説の十篇には似つかわしくないです。

イタリア語のタイトルでは"IL DECALOGO"です。十篇で一つの物語という印象が強くなります。今回見直してオムニバスを超えたささやかだけれども無視のできない繋がりの物語だったなと改めて思いました。天使と呼ばれる男性が出てきたり出てこなかったりしますが、明らかにそこには愛というより剥き出しの人間性がどの篇にも刻まれていました。ワルシャワの高層アパートのどちらかというとあまり裕福ではない人々の人生の葛藤が滲み出ていました。