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1980年代のアクション映画黄金期を代表する数々のアメリカ映画でファイト・ソングを歌い続けるロックンローラー、スタン・ブッシュへのインタビュー 特別完全版

取材・文:山﨑智之

スタン・ブッシュ、2024年に蘇った格闘トーナメント映画『The Last Kumite』で完全復活!『トランスフォーマー ザ・ムービー』(1986年)の「ザ・タッチ」、『ブラッドスポーツ』(1988年)の「ファイト・トゥ・サバイブ」、『キックボクサー』(1989年)の「ネバー・サレンダー」などは我々のファイティング・スピリットに火を付けてきた。新作『The Last Kumite』海外公開記念インタビューは映画秘宝2024年10月号に掲載されているが、こちらでは未掲載パートをご紹介する。そのトークの熱気が冷めることはない。両方併せて楽しんでいただきたい。

スタン・ブッシュへのインタビューが掲載されている『映画秘宝』10月号は只今発売中!

●あなたのように映画の主題歌で知られ、それを活動の軸のひとつとしているシンガーはあまりいません。思い浮かぶのはサバイバーがそれに近いぐらいですが、他に盟友といえるアーティストはいますか?
スタン 私がやっている音楽は1980年代から基本的に変わっていないんだ。シーケンサーやヘヴィなギター、歌い上げるヴォーカルとかね。『トップガン』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のような映画を彩ってきた音楽だよ。あの時代、みんな映画館から出るときに主題歌のビッグなメロディやフックを口ずさんでいた。1990年代に失われてしまったけど、それを取り戻したいんだ。それをやり続けているアーティストやバンドは他には思いつかないね。
●1990年代、グランジが大ブームになって誰もがドラッグをキメたり自殺したりしましたが、あなたはどのように時代に対応しましたか?
スタン 1990年代にグランジ・ブームが起こってジャーニーやフォリナーのようなバンド、「ザ・タッチ」みたいな曲はダサいといわれるようになってしまった。私はヨーロッパや日本のレコード会社と契約してキャリアを続けられたけど、アメリカではずっとメジャー系から見向きもされなかったんだ。市場の規模はガクンと小さくなっても、自分の信じる音楽のために戦い続けた。今でも自分の体内には1980年代の血が流れている。「The ‘80s」は素晴らしかった時代を歌った曲だよ。ミュージック・ビデオも作っていて、私の息子が若かった頃の私を演じている。フォルクスワーゲンのバスにガールフレンドと自分のバンドと乗って、どこにでも行った。輝ける日々だ。
●同じ1980年代でも、『ウォッチメン』のように、よりダークな側面を描いたコミック/映画 もありますね。
スタン 『ウォッチメン』は素晴らしい映画だったけど、私の曲は使われなさそうだね(苦笑)。『The Last Kumite』はそれとは異なる、イノセントな映画だ。ヒーローは苦難を乗り越えて勝利に向かって進んでいき、悪者はどこまでも悪だ。

スタンが曲を寄せた格闘映画『THE LAST KUMITE』海外ではソフトも発売中

●そんな無垢なほどのポジティヴな姿勢は、あまりにまっすぐなゆえに、後世でギャグにされたりもしました。『ブギーナイツ』(1997年)でマーク・ウォールバーグが「ザ・タッチ」をヘタクソに歌うシーンはそのひとつの例だと思います。スタン ハハハ、あれは笑ったね。彼とは5年ぐらい前(2017年)、『トランスフォーマー』系のコンベンションで会ったことがあるんだ。バックステージで歩いているのを見かけたから後ろから近寄って、耳元で「you got the Touch!」と歌ったら驚いていた。2人でその場で歌ってSNSに上げて、数十万のアクセスがあったよ(笑)。

https://www.facebook.com/watch/?v=10155686537876532

スタン マークは最高にクールな人で、愛国者でもある。アメリカにはああいう人間がもっと必要だよ。
●『ブギーナイツ』を見たとき、茶化されたとは感じなかった?
スタン もちろん茶化しているんだけど、爆笑したよ。1980年代はあんな時代でもあったんだ。だからこそ魅力的なんだよ。確かに私が歌う曲は誇張されていたり、やり過ぎだと感じられるものがある。でも、それが私だ。自分の目指す道なんだ。
●普段どんな映画を見ていますか?
スタン ドラマ性のある映画が好きなんだ。1980年代には毎週歴史に残るような名作が公開されていた。最近は良い映画でもダークなものが多い気がするね。とは言っても、好きなもんもある。『ミッション・インポッシブル』シリーズは毎回楽しんでいるよ。やはり自分が主題歌を歌うようなタイプの映画に肩入れしてしまうね。『リーサル・ウェポン』シリーズのどれかで歌いたかったな。『エクスペンダブルズ』もクールだったし、マーベル・ユニバースの作品も好きだよ。子供向けのストーリーで、大人が見るにはちょっと違和感をおぼえる作品もあるけどね。
●あなたは1990年代に日本のゼロ・コーポレーションから作品をリリースしていましたが、彼らとの関係はどんなものでしたか?
スタン 基本的にヨーロッパのレコード会社と契約して、日本のレコード会社にライセンス供給する形だったから、あまり深いコミュニケーションはなかったんだ。もっと日本のファンの求めるものを知っておきたかった気持ちはあるね。その頃はまだインターネットもなくて、世界中の人々の意見を知ることが出来なかったんだ。
●1980年代はギター・ヒーローの時代でもありました。あなたのお気に入り、一緒にやりたかったギター・ヒーローは?
スタン たくさんいるよ! ジミー・ペイジやジョー・ウォルシュ、それより後だとスティーヴ・ヴァイとかね。スティーヴとは直接の面識はないけど、共通の友人が何人かいるよ。彼の後にデイヴ・リー・ロスと一緒にやったロケット・リショットというギタリストも素晴らしいね。
●あなたは自分の作品をどのフォーマットで聴かれたいですか? LP、CD、デジタル?
スタン 私の音楽でロックしてくれれば、どれでもオッケーだ。数年前(2021年)にCD10枚組ボックス『The Stan Bush Collection』が出たんだ。一気に私のキャリアを追うことが出来る、お買い得のボックスだよ。誇りにしているし、オススメだ。もちろん自分のキャリアが終わったわけではないし、新しい曲を書いているところだ。来年(2025年)の前半にはニュー・アルバムを出したいね。ただ急ぐよりも、いつまでも後悔しない良いアルバムにしたいと考えている。ファイト・ソングだけでなく、心の奥底を掘り下げるような曲、自分よりも大きな存在を描く曲など、いろんなタイプの曲があるよ。
●勇気をもって立ち上がって戦うことを促すファイト・ソングはあなたのトレードマークとなっていますが、どのようにしてそのスタイルを確立させたのですか?
スタン ただ自分らしくある、それだけだ。惰性でなく、新しい日々を生きる。私は神を信じているし、この世界で限られた時間、自分が何をなすべきかを日々考えている。そんな想いが音楽に込められているんだ。もし私の音楽が聴いてくれたみんなのハートに触れたなら、これ以上のことはないよ。
●歌い始めたとき、どんなシンガーから影響を受けましたか?
スタン 最初に自分で歌おうと思ったのは、ザ・ビートルズのポール・マッカートニーを聴いたときだった。それからポール・ロジャース、フォリナーのルー・グラム、モータウンのソウル/R&Bから影響を受けた。スティーヴィ・ワンダーも好きだったし、バーブラ・ストライサンド、ジャーニーのスティーヴ・ペリー……彼らはいつだって自分にとって多大なインスピレーションを与えてくれる存在だ。
●これまで名前の知られたバンドから勧誘を打診されたことはありますか?
スタン 「ザ・タッチ」がヒットした後、ジャ−ニーのジョナサン・ケインと一緒にやる話があったんだ。一緒に曲を書いたけど、うまく行かなかった。それで彼は代わりにジョン・ウェイトとバッド・イングリッシュをやることになったんだ。それからフォリナーのオーディションを受けたことがある。1990年代、サバイバーのオープニング・アクトとしてヨーロッパをツアーして、その後に話をもらったんだ。アリス・クーパーの『ヘイ・スチューピッド』(1991年)でバッキング・ヴォーカルを歌ったり、ブライアン・アダムスとの活動で知られるジム・ヴァランスと共作したこともある。でも結局、私はソロ・アーティストが向いているんだ。時にトヨタのトラックやクアーズのビールのCMソングを歌ったりもした。良い人生を歩んできたと思うね。
●今後、映画で主題歌などを歌う予定はありますか?
スタン いくつか話をもらっているし、正式にスタートを切ったら発表するよ。今はまだ明かせないんだ。
●『Bloodstorm』には関わっていますか?
スタン いや、知らないよ。それは何?
●私も見ていませんが、ベトナム帰還兵が悪い奴と戦うそうです。
スタン 私向きの映画のように聞こえるけど、特に話はもらっていない。ぜひ見てみるよ。
●『トランスフォーマー』の時代からアニメは大きく変化してきましたが、最近のアニメ作品は見ていますか?
スタン タイトルと内容を認識している現在進行形のアニメはうちの子供が見ている。ポケモンぐらいだけど(笑)、コンベンションのショーケースで見たりすると凄いものがあるね。アクションやバトルも昔とは段違いの迫力だ。私の曲が合いそうなものもあるし、コラボレーションを実現させてみたいね。私は立ち上がって戦う人たちのために歌い続ける。それは性別も国籍も関係ない。『セーラームーンR』にも曲を提供したことがあるんだ。

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