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「やっぱり爆発が見たいじゃないですか。タイトルに偽りなし!」Netflix映画『新幹線大爆破』は新たに再構築したリブート作。「Next on Netflix 2025」樋口真嗣監督トークパネル・レポート

 2月12日、東京ミッドタウンにて「Next on Netflix 2025」が開催。2025年に配信されるNetflixオリジナルの映画、シリーズ、アンスクリプテッドのラインナップが発表された。
 その中で一際注目を集めたのが『新幹線大爆破』。『シン・ウルトラマン』以来、久しぶりにメガホンを取った樋口真嗣監督によるリブート作となる。オリジナルはちょうど50年前の1975年に公開された東映によるオールスター映画。走行速度80キロを下回ると爆発する新幹線を軸に、極限の緊張状態に晒される運転士、国鉄の運転指令長、そして爆弾を仕掛けた犯人による、新幹線内外でのスリリングな攻防を骨太なタッチで力強く描いた、日本におけるパニック映画の代名詞的作品。
 新しい『新幹線大爆破』も時速100kmを下回ると爆発する爆弾を仕掛けられた、東北新幹線はやぶさ60号を舞台にして物語が展開。なお今回の『新幹線大爆破』の大きなトピックのひとつとして、JR東日本が特別協力したことがアナウンスされた。
 主演の草彅剛演じる車掌を中心に、JR東日本監修のもと、犯人の陰謀を食い止めようと奮闘する鉄道関係者たちの姿をリアリティたっぷりに描いていくという。
文責:取材・文◎今井あつし

●リメイクではなく、リブートのわけ

 発表イベントでは樋口監督のトークショーも実施。本作のプロデューサーであり、樋口監督とは旧知の仲だという佐藤善宏がモデレーターを務める中、ステージに登壇した樋口監督は開口一番、「小学校3年の時、公開初日に観に行った時から今までずっと好きで、以前『新幹線大爆破』のレーザーディスクがリリースされた際、ジャケットデザインを担当させていただいたりしました」と熱い想いを吐露。
 実際に本作のプロジェクトが始まったのも樋口監督の情熱から始まったと、佐藤プロデューサーは明かす。樋口監督も貫禄あふれる佐藤プロデューサーを「ブルドーザーのように馬力のある男」と称し、全面的に信頼を置いていると説明。
 オリジナルが発表された1975年から50年もの月日が経ち、複雑かつ劇的に社会状況が変化した現在。いまや5分単位で運行する新幹線の密度の高いダイヤグラムで、「爆弾を仕掛けられた新幹線は本当に起こり得るのか。それが非常に難しいポイントだった」と樋口監督は語る。
 日本の安全神話の象徴とも言われ、1975年当時とは比べ物にならないほど高度に発達した運行システムの中で、車両に爆弾が仕掛けられた場合、「止まることなく稼働しているシステムがどうなっているのか」といろいろと調べ上げ、取材を重ねたという。
 新幹線に爆弾を仕掛けるというオリジナルの設定は尊重しつつも、物語をなぞるのではなくて、令和の時代に相応しい作品にするために、オリジナルを一から再構築する方法を採用。「リメイクではなくて、リブートという言い方が正しい」と樋口監督。

●円熟味を増した草彅剛。その本領は耐える姿にあり

 オリジナルは千葉真一演じる運転士、運転指令長役の宇津井健、主犯の高倉健の3人が主要人物だったが、本作は草彅剛演じる車掌を主人公に据えたのが大きな変更点。
 それに関して、樋口監督は「昔と比べて、新幹線の乗務員が少ないんですよ。今回調べてビックリしたのがそこで、こんなにも乗務員1人の責任が重たいのかという」と語り、新幹線の安全を受け持つ車掌が改めてその責任の重さを背負い込む姿こそが「一番面白いんじゃないかな」と思い、物語の中心人物に選んだという。
 主演の草彅とは2006年のリメイク版『日本沈没』以来、約20年振りのタッグとなる。樋口監督は「一緒に『日本沈没』を作り終えた後、他の作品に出ている彼を見て、嬉しさ半分、『自分が撮れない』という悔しさ半分だった」と胸の内を明かす。
 20年前と比べて、草彅剛に変化はあったのかと聞かれると、「やはり20年分の人生の深みが彼の中に蓄えられていて、こちらが指示を出さなくても、染み出てくるというか」と、役者として円熟味を増したと分析。
 さらに草彅の本質を「耐えて、忍んで、堪える」姿にあると言い、偶然、爆弾を仕掛けられた車両に乗り合わせてしまったものの、パニックに陥った乗客の想いを受け止めて、乗務員として責任を全うする車掌に説得力を与えたという。
「耐える姿が多いから辛かったかなと思うんですけど、でも、それこそが草彅さんの魅力でもある」

●JR東日本が特別協力。細部に至るまで監修が行われた

 本作は草彅演じる車掌をはじめ、未曾有の危機に立ち向かう鉄道マンたちの矜に焦点を当てていくという。先ほども記したように、JR東日本が特別協力。実際に本物のはやぶさ60号が撮影に用いられた。
「基本的に鉄道会社は切符を買った乗客のためのもので、映画の撮影にスペースを空けてくれることはありえない。そこはさすがNetflixさんですよね」と喜びをあらわにする樋口監督。
 佐藤プロデューサーもJRが協力するにあたって、打ち合わせの席で「このタイトルですが、本当に大丈夫ですか?」と何回も念を押して確認したことを明かす。
 本作の撮影のために通常の新幹線とは別に、撮影専用の1編成の車両を手配。特別ダイヤルを組んで、東京―青森間を走行したという。合計7往復も掛けて臨場感溢れるシーンが撮影された。
 また主人公の車掌をはじめ、登場する鉄道関係者たちは運行に関わる実在の職員たちをモデルにしており、立ち振る舞いや敬礼の角度などの細かいところなども、モデルとなったJR職員が監修にあたったという。
「なるべく映画のためのウソを無くして、本物のJRと同じように作り込んでいきましたね」と樋口監督が言うと、佐藤プロデューサーは「役者さんたちも台詞の発し方などに関しては、監督ではなくて、JRの職員の方たちに確認していました」と応え、実際にアクシデントが起きた場合の対処の仕方も指導してもらったと語る。
 リアリティを追求した作り込みから、樋口監督は「スタッフ・キャスト全員が臨時のJRの職員のような意識で撮影に望んだ」と神妙な顔つきで現場を振り返った。

●日本特撮では最大規模となる1/6サイズのミニチュアワーク

 樋口監督と言えば、特技監督として今まで様々な作品でスペクタクルな映像表現を提供し続けてきたが、本作でもその手腕を遺憾なく発揮。何よりもこだわった点として、「タイトルが『新幹線大爆破』ですから、爆破をちゃんとやらなければいけないんじゃないか」と熱く語る。
 物語がどのような展開を迎えるのか。明言こそ避けたものの、「やっぱり爆発が見たいじゃないですか。自分が監督する以上、いかにして新幹線を爆発させるかっていう。タイトルに偽りなし!」と気炎を上げる。オリジナルを知っている者からすれば、否が応でも期待を煽る発言だ。
 なお新幹線の描写ではミニチュア撮影も行われている。通常では1/20縮小サイズのものが用いられるのだが、「それだとやっぱり、この映画のお客さんは納得しないだろう」と、ハリウッド映画の『ダークナイト』と同じ規模の、緻密で精巧なミニチュアワークを採用。1/6縮小サイズという、日本特撮では最大規模となるスケールの新幹線のミニチュアが制作された。
「当然、ミニチュアと言えども新幹線ですから、走っているところを撮影するために、それ相応の長いレールを用意して、キャメラも同時進行で走りながら撮影しました」と、念入りに作り込んでいったという。
 さらに佐藤プロデューサーが「日本中の特撮関係者が『とんでもないことをやってるな』と聞きつけて、現場まで見に来てましたね」と裏話を明かす。ともあれ、2人は1/6サイズによる重量感が画面に迫力をもたらしたことをアピール。自信のほどを覗かせた。
 最後に樋口監督から『新幹線大爆破』を楽しみにしているファンの方にメッセージ。
「今までの日本映画では企画段階で諦めたようなことが実現できたんじゃないかなと思います。何より架空のキャラクターに頼った映画ではなく、現実にあるものだけで構築した映画の中で、人間同士の「生き残りたい」という欲望がぶつかり合う。JRさんの協力を得たことで、実際の新幹線の中で熱い物語が繰り広げられます!」

 新たにノンストップサスペンスアクションという形で生まれ変わったNetflix映画『新幹線大爆破』は2025年4月23日世界独占配信。

<リンク>
Next on Netflix 2025:Netflix注目作品ラインナップ
https://youtu.be/uOkyyYNwNsU

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