“映人仲間” 特別回 映画『初めての女』感想俳句会 ~吟行編~
映画『初めての女』の感想を「俳句で考えよう」
“慶応義塾大学俳句研究会”の皆さまのご協力のもと、公開前イベントを開催しました。
田端周辺を散策し『初めての女』についての感想を俳句で詠んでいきます。
※慶応義塾大学俳句研究会の皆さまは、事前に映画を鑑賞しております。
はじめに
吟行とは?
吟行とは、俳句や和歌などの詩歌を詠むために、景色のよい所や名所旧跡などに出かけることを言います。
俳句の場合は、五七五の十七音で季語を含めた俳句を作るのが一般的です。景色やその時感じたことなどを俳句に詠み込むことで、五感で味わった情景や情感を表現します。
吟行は、単に俳句を作るだけでなく、自然と触れ合い、五感を研ぎ澄ませることも目的としています。普段何気なく見ている景色をじっくりと観察することで、新しい発見があったり、俳句の題材を見つけたりすることができます。
また、同じ場所を複数の俳人が吟行することで、それぞれ異なる視点から詠まれた俳句を比べることで、俳句の奥深さを感じることができます
なぜ、田端?
瀧井孝作は、大正10年(1921年)から東京・田端に住んでいました。
当時、田端は文士の街として知られており、多くの文化人が住んでいました。瀧井孝作もまた、田端での暮らしの中で、芥川龍之介や志賀直哉などの著名な作家と交流を深めました。
この間、彼は「無限抱擁」をはじめとする多くの作品を発表しました。
「無限抱擁」は、瀧井孝作の最初の妻・榎本りんとの恋とその死を題材とした長編小説です。
田端での暮らしは、瀧井孝作の文学活動に大きな影響を与えました。作品の中に描かれている風景や情景は、田端での体験に基づいているものが多くあります。
スタート!
それでは、吟行に向けて出発!
吟行のメンバーは、小平哲兵監督・主演の髙橋雄祐さん・脚本の桑江良佳さん・プロデューサーの羽石龍平さん、
そして、慶応義塾大学俳句研究会の皆さまです。
いざ、吟行へ!
田端文士村の発祥
田端は、明治の中頃まで雑木林や田畑の広がる閑静な農村でした。
しかし、上野に東京美術学校(現・東京藝術大学)が開校されると、次第に若い芸術家たちが暮らすようになります。
明治33年に小杉放庵(画家)が下宿し、36年に板谷波山(陶芸家)が田端に窯を築くと、その縁から吉田三郎(彫刻家)、香取秀真(鋳金家・歌人)、山本鼎(画家・版画家)らが次々と田端に移り住みました。
芸術家を中心に“ポプラ倶楽部”という社交の場も作られ、明治期の田端は<芸術家村>となったのでした。
残るものと残らないもの
明治33年に小杉放庵(画家)が下宿し、36年に板谷波山(陶芸家)が田端に窯を築いた、場所は既にコンビニなっていました。
次に、訪れたのは『ポプラ坂』
この坂は、小杉放庵が芸術家たちの社交場として作った『ポプラ倶楽部』が名前の由来。
「残るものと残らないの違いって何なんですかね?」
ふと、本作の主演・髙橋さんが呟きます。
「うーん……」
一行は、答えが出ないまま坂を上っていきます。
瀧井孝作の下宿
一行が更に進むと、見えて来たのはある住宅地。
瀧井孝作が田端時代に住んでいた下宿があった場所です。
やはり、ここも残ってはいませんでした……。
しかし、展望が良く田端操車場が見渡せます。
父との確執
瀧井孝作は父・新三郎との折り合いが悪く、
映画でもその様子は描かれています。
しかし、父親について書いた作品が多く、
短編集『父』には、処女作「父」の他に父親にまつわる7編の短編が収められています。
18歳で高山を出奔し、その後故郷で暮らすことはなかった瀧井孝作でしたが、心のどこかに父親への想いが残っていたのかもしれません。
そして、病床で自らに死が近いことを悟った瀧井孝作は、
次女の小町谷新子さんに「これで高山に帰れると思うとホッとする」
と言葉を残しています。
正岡子規の墓所
八幡坂を下って、やって来たのは大龍寺。
ここには、正岡子規の墓所があります。
瀧井孝作は正岡子規の孫弟子。
正岡子規→河東碧梧桐→瀧井孝作
脈々と、その俳句への想いや技術を継承していきました。
「君の本当に感じた句を見てみたい」
映画の冒頭、碧梧桐のこの言葉に孝作は苦悩します。
雨が降りしきる
正岡子規の墓所を訪れた一行でしたが、
ここで、途端に雨が強くなってきました……。
「雨が強くなってきたので戻りましょう」
プロデューサーの羽石さんの判断で、一行は止む無く
句会の会場へ。
しかし、この吟行で得たものも多くありました。
いざ、句会へ!
田端区民センター
今回の映画『初めての女』感想俳句会の会場は、
田端区民センターの第三ホールをお借りしました。
ここには“ポプラ倶楽部”を作った小杉放庵(画家)が住んでいた場所でした。
外はまだ雨……
外では、まだ雨の音が聞こえます。
ここからは、慶応義塾大学俳句研究会の代表・清水さんの進行のもと句会を進めていきます。
句会が始まったが……
俳句にも、守らなければならない沢山のルールがあります。
五七五の17音、季語、選定方法などなど……
研究会の皆さんがスラスラと書き進める中、
映画チームは頭を抱えてしまいます。
この後の展開は~句会編~に続きます。
乞うご期待ッ!
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