“映人仲間”第十回『原作者 瀧井孝作』
映画『初めての女』の原作『俳人仲間』(新潮社)になぞらえて、本作の監督・小平哲兵が撮影当時のキャスト陣とスタッフ陣を振り返ります。
「なぜ書こうと思いたったのか?」
10回目は、原作者の瀧井孝作が、なぜ晩年になってから初めての女が収録されている、俳人仲間を「書こうと思い立ったのか?」について、私の考えを書こうと思います。
「なぜ書こうと思いたったのか?」
この問いはオーディションの時にも俳優の方々に必ずお聞きしました。
それは、同じような答えに期待したワケでも、想像の上をいく様な話しをして欲しかったワケでもなく。
ただ、想い馳せて頂きたかったんです。
まるで昨日に起こった事のように
「初めての女」は若かりし日の青年期、純粋で窮屈な時の中での、出会いと別れが描かれた作品です。
原作の「初めて女」では着物の下に着てる襦袢の色や、その日の肌にあたる夜風の心地良さ、浮かぶ月の満ち欠けなど、まるで昨日に起こった事のように具に書かれていました。
それが本当に憶えていたのか、美化されて書いたのかは分かりません。
(私は今日の朝ご飯も夜には忘れます)
"会者定離"
しかし、肝心なのは彼が己に起きた事に対して、全てを残らず受け入れ、愛し、昇華したという事は間違いがありません。
私は脚本にしてみて、映画にしてみて、仲間と語り尽くしてみて…頭に浮かんだ言葉があります。
"会者定離"
出会った人とは必ず別れがくる定めという言葉です。
笑いながら
作中、孝作は悲しい別れを経験します。
しかし、それは物質的な別れであって彼の心にはずっと居たのだろうと、そう思います。
だから、晩年になっても鮮明に書けたのだと思います。
きっと孝作は晩年、自分の心に掛ける為に書いたのだと……
そう私は思います。
そして、映画ではそのケジメをラストシーンにしようと思いました。
今頃きっと、あの世で別れた人達と会って秘密の思い出話しをしているのではないでしょうか。
笑いながら。
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