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“映人仲間”第九回『稲田役 保坂直希さん 子太役 大地泰仁さん』
映画『初めての女』の原作『俳人仲間』(新潮社)になぞらえて、本作の監督・小平哲兵が撮影当時のキャスト陣とスタッフ陣を振り返ります。
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時間こそ少なかったが
11回目は、稲田役の保坂さんと子太役の大地さんについて振り返っていきたいと思います。
保坂さん、大地さんとは正直、余り現場で話す機会は少なかったというのが本音だ。
しかし、時間こそ少なかったが其々の登場シーンではちゃんと作品と向き合い、僕の意図も汲んで演じてくれたと思う。
だが、保坂さんは違う
保坂さんとの現場にて、印象に残っているのは……やはり、孝作に対し真っ向叱りつけるシーンだろう。
あまり、繰り返す事は相応しくないシーンだったので、本番前にいつもより時間を使ったのを憶えている。
髙橋さん(孝作役)とは、本撮影前からずっと高山に留まり、話し合っていたから心配してはなかった。
だが、保坂さんは違う。
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自然と産まれた現象
直前に東京から高山に呼ばれて、そして演じるのだ。
それでも数回やり直した後に、しっかりとやり切ってくれた。
孝作に対し、ただ怒りをぶつけるのではなく、孝作に自身の想いが伝わらない悔しさや、虚しさも強い言葉に乗せられていた。
それを受けている孝作も、ひしひしとそれを心にグサっグサっと痛みとして感じる事が出来た。
なので、叱られ、稲田が去った後、脚本には無かった孝作のその後の嘘のない身体表現が産まれたのだろう。
しかし、打ち上げの保坂さんは現場でのピシッとした姿ではなく……気さく過ぎる少し歳上の酔っ払いの兄ちゃんだった。
「朝まで呑もうぜ」
僕は、そういう人が好きだ 笑
悪い奴なんで悪くやってくれ
大地さんは、私が夕ご飯のロケ弁を一人休憩所の廊下で食べていると、トットットッとやってきて……。
「あの監督……助監督から子太はこの世界で一番悪い奴なんで悪くやってくれと言われたんですが……」
すぐに僕はそれは違う事、子太が鶴昇を本当はどう思っているのか、ナゼ子太がそんな振る舞いを取るに至ったのかを大地さんと話し合った。
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本作でも印象的なシーンの一つ
「寂しくなるなあ」
それで産まれたのが、黄鶴の廊下で身請けされる事を告げるシーンだ。
鶴昇に対し「寂しくなるなぁ」と伝えるシーン。
カメラには写っていないが、鶴昇が去って行く姿を、子太は立ち止まり振り返って見ている。
だから、鶴昇は違和感が全くなく表情がスッと無くなり、手前の闇に消えて行けたのだろう。
大地さんとは、あれから会えていないが、上映が無事終われば僕は大地さんの出ている作品をこっそりと見に行くと決めている。
真摯に向き合って
保坂さんも大地さんも役に対し、真摯に向き合って演じてくれていた。
本当はもっともっとお二人から学びたかったが、それは次回の楽しみの一つだ。
保坂さん、大地さん、お待たせしました。
ありがとうございました。