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映画人たちが見せた、ちょっとエモい素顔 第2回/2020年ブレイク女優・上白石萌音さん、飛行機内で見せたひたむきな姿勢

 読者の皆さま、こんにちは。映画.comの大塚と申します。こちらのコラムでは、国内外さまざまな撮影現場で取材してきた私が垣間見た、映画人たちが普段なかなか見せることのないエモーショナルな素顔をご紹介します。

 第2回となる今回は昨年、主演ドラマ「恋はつづくよどこまでも」(恋つづ)が大ヒットし、2020年ブレイク女優として各メディアで引っ張りだこの存在となった上白石萌音さんが、まだ高校生だった頃のエピソードに触れてみようと思います。

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■“涙のデビュー”から、主演映画「舞妓はレディ」撮影での奮闘

 「恋つづ」での好演は記憶に新しい萌音さんですが、今年もその勢いはとどまることなくNHK大河ドラマ「青天を衝け」、NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(深津絵里さん、川栄李奈さんとのトリプル主演)がダブルで控え、現在放送中のTBSドラマ「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」でも再び主演を務めています。

 萌音さんが現在地に辿り着くまで、足掛け10年を要しました。初めてメディアの前に姿を現したのは2011年1月9日、東京・台場の劇場で行われた第7回「東宝シンデレラオーディション」

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 当時過去最高となる4万4120通の応募のなか、書類審査、地区予選、合宿審査を通過した15人のファイナリストの中に、妹の上白石萌歌さん、近年は映画やテレビに引っ張りだこの浜辺美波さん、「モンスターハンター」でハリウッドデビューを飾った山崎紘菜さんらとともにいたのです。

 結果は妹の萌歌さんがグランプリに輝き、萌音さんは審査員特別賞を受賞しました。このとき強く印象に残ったのが、自らの受賞以上に、史上最年少となる10歳でグランプリを戴冠した妹・萌歌さんの姿に感動し、泣きじゃくる姉としての顔でした。

 それから2年ほど経過した13年5月、筆者は東京・日比谷にある東宝の本社会議室で萌音さんと再会を果たしました。日本を代表する映画監督・周防正行氏の新作舞妓はレディの製作決定を受け、20年以上も温め続けてきた渾身の企画に着手する周防監督と主人公となるヒロインをお披露目する取材の場に呼ばれたからです。

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周防正行監督と萌音さん

 主演オーディションには約800人が参加したそうですが、最終選考のカメラテストで「今すぐ本番が撮れる」と周防監督を唸らせたのが萌音さんでした。オーディションを終えてからは京都を2度訪問し、置屋に1泊した際には「女優なんかやめて舞妓になった方がいい」とスカウトされたようで、花街に身を置く人々にも花開く前の秘めたる魅力は届いていたのでしょう。

 歌舞伎役者を夫に持つ富司純子さんが置屋の女将に扮していますが、劇中で披露する日本舞踊のシーンに触れ「小さい頃からやっていないと難しいのですが、初めてなのにずっとやっておられるくらい上手。本当に努力家」と称えており、その頃から粉骨砕身して役に寄り添う姿勢を保っていることがうかがえます。

■フランス・パリでの密着取材で目撃した“努力”

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 撮影が無事に終わり公開を控えた14年7月、萌音さんは機上の人となります。「舞妓はレディ」のプロモーションで仏パリを訪れ、市内のパリ日本文化会館でのプレミア上映、ヨーロッパ最大の日本文化・エンタテインメントの祭典「JAPAN EXPO」に参加するためのものでした。

 舞妓姿で凱旋門やエッフェル塔を訪れた際は、「すごーい!」と花の都パリの街並みに興奮しきりの様子で、好奇心溢れる16歳らしい反応は周囲の関係者を和ませました。

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 ですが、筆者が本当の意味で萌音さんから目が離せなくなったのは、実は帰国する飛行機内での姿を目撃してからだったように感じます。

 パリからの帰国便では既に原稿も出稿していたため、筆者は映画を鑑賞してはウトウトするという気ままなひと時を満喫していたわけですが、トイレに行くために席を立ったとき、消灯中で真っ暗ななかライトを灯して必死に勉強する萌音さんの姿が目に飛び込んできたのです。

 パリ滞在中から、帰国したらすぐにテストがあると言っていた萌音さん。大学進学を考え、担当マネージャーによれば成績は常に学年で上位だったそうですから、芸能活動を何かの言い訳にはしたくなかったのでしょう。

 誰よりも疲れているはずなのに、一心不乱に試験勉強に励む萌音さんの姿勢に頭が下がる思いでした。その横顔には一切の迷いがなく、清々しさすら感じられたほどで、シートに身を沈めながら参考書と向き合う凛とした姿は、いまも容易に脳裏に浮かべることができます。

 帰国後、この件についてさらりと触れてみると、萌音さんは「見られちゃいましたか」と控えめな照れ笑いを浮かべておりました。

■ついに「舞妓はレディ」公開 泣きじゃくった舞台挨拶

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 製作発表から1年4カ月後となる14年9月、全国300スクリーンで封切られた「舞妓はレディ」。東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた初日舞台挨拶で、萌音さんは登壇から降壇までの約40分間、泣きじゃくりました。

 舞台挨拶で、共演した先輩陣からおくられた珠玉のメッセージをご紹介します。

岸辺一徳さん「とにかく一生懸命やりなさい。そこから何かが生まれる」

渡辺えりさん「大変なことや辛いことがあったら、今日のことを思い出しなさい」

竹中直人さん「大丈夫、大丈夫、きっと大丈夫。人は好き勝手言うけど、でも大丈夫」

田畑智子さん「15歳の頃に共演した森繁久彌さんが『拍手は人を良くもするが、悪くもする』と色紙に書いてくださった。この言葉を贈ります」

長谷川博己さん「先輩から『売れていない時に何をするかで俳優の人生は変わる』と言われたことが忘れられない。これから色んな波があると思うけど、良いことがあってもニュートラルでいることです」

富司純子さん「真っ白なブラウスを着ているわね。周防監督みたいに素敵な監督ばかりじゃないのよ。これから色んな監督に出会うと思うけど、いつも真っ白のままで監督の作品の色に染まり、撮影が終わったら真っ白に戻る。ひとつずつ勉強して、いつも真っ白な萌音ちゃんでいてね」

周防正行監督「撮影中から『ちゃんと自分で考えなさい』と言ってきた。考えて、考えて、ちゃんと自分の言葉で話せる人になってもらいたかった。人をあざむくことはできても、自分をあざむくことはできない。一生懸命全力を尽くして、一歩一歩、真剣に向き合っていってください」

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 ひとりひとりの愛あるメッセージに対し、溢れる涙を拭うことすら忘れて「今日のことを一生忘れず、皆さんにまたお会いしたときに『成長したね』と言って頂けるように、これからも頑張っていきたい」と決意表明した萌音さん。

 あれから約6年半、メディアでは見ない日がないほど八面六臂の活躍をみせています。

 前述の通り、今年は大河と朝ドラが控えていますが、きっと謙虚な姿勢を崩すことなく卓越した演技力に磨きをかけ、周囲の人々をポカポカとした気分にさせてくれる笑顔を浮かべながら今日も一歩一歩、前進を続けているはず。

 今年はドラマで大忙しでしょうが、22年以降、再び銀幕の世界で躍動することを願わずにはいられません。

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第一回は高倉健さん


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