初めての夏休みがない夏
日曜の昼に目が覚めると、すごく変な気持ちがした。タイマーをかけていたクーラーが切れていて蒸し暑い。胸がざわざわして、なんだか見覚えのあるこの感覚、でも何なのか分からない。昔の思い出が断片的によみがえって、なんだか寂しくて、ちょっぴり悲しくて、でも何かが新しいことが始まりそうな気持ちがした。なんだろうな〜と色々思いながら、用事に間に合うように家をでた。外は蒸し暑い。太陽が皮膚に直接触れる。バスを待っている間、SNSを開く。
後輩のツイッターを見て分かった、夏休みだ。この湿っぽい空気、火照る太陽、完全に夏休みに入る前のあれだ。
あっついな〜という少しのイラつきとともに、昔の夏の思い出を次々と思い出す。
むしむししている朝に早起きして、慌てて学校へ行き、朝の空きコマを使って次の時間のテスト勉強をする。最寄りから大学までの5分間くらいの道のり、地味に汗を掻く。テストが終わって、講義棟から出ると、外の空気がモワッとする。サウナじゃんと少し驚く。できたかな、落としたかなという不安と、まあいっか、終わったことだしという安堵が交錯し、サークル棟に入る。練習が終わり、夜の風はちょっと涼しい。近くの居酒屋に入ったり、コンビニの前でいっぱい飲んだり、旅行や夏休みの予定を立てる。一人の帰り道は、昔の恋人を思い出し、少し寂しい。
私の大学の夏休みは3ヶ月あり、意味が分からないくらい長かった。夏休みのために学期の一年間があると言っても過言ではない。バイトをしてお金をためて旅行したり、学生活動に参加したり、ダンスの公演に参加したり、好きな人と夏の予定を立てたり、大学四年生の時は卒論で病んだり。大学時代の思い出の大半は夏休みにあった。
春に別れや出会いをし、新たな意思決定をする。夏は別れを引きずりながらも、新たな環境に慣れて来る時期で、不安とわくわくがあふれる。最も感情が揺さぶられる季節。あの時、誰と何をしていたのかという出来事から、当時の暑さへの鬱陶しい気持ちまで、何もかもが鮮明に覚えている。日曜に感じたあの謎のわくわくは、学生時期の感覚がまだ消えていなかったのか。
雨上がりの匂い、汗のベタつき、人があふれる週末の渋谷、ナンバー練習前の緊張感、留学へ行く友人に対する寂しさ、もう全部戻ってこないんだな〜あの時の自分はまだ世間知らずで、自分はやればなんでもできる最強な人間だと思っていた。社会人になって、自分の弱みと限界を知る日々。外の土砂降りを眺めながら思いにふける。さっきまで快晴だったのに。最近の気象変動は激しい。
社会人になってもうあの長い夏休みはない。謎のわくわく感の中で、私はPCの前に座っている。休みがないことに落ち込んでいるわけではないけど、学生時代の出来事が懐かしく、少し感傷的になる。
卒業前から社会人になるどっかのタイミングで、大学5年間の振り返りを書こうと思っていた。でも言い訳として、仕事が忙しくて、ノートを開くのがなんと5ヵ月ぶりとなってしまった。夏の思い出のおかげで、学生時代を思い出し、記録でもしておこうと思った。感傷に浸かることもきっと悪いことではない。
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