第2話 国際契約書には何が書いてあるのですか?
英文の国際契約書には何が書いてあるのか、見てみましょう。
こうして並べてみると、書いてあることは日本の契約書とそんなに変わらないようにも見えますね。そうでしょうか?
まず、ごく普通の国際的な売買契約の目次を見て下さい。
これを上のリストに当てはめて、本当に変わらないのかを見てみましょう。
①の当事者のことは、契約書では第1条(Article 1 と書いてありますが、他に Section 1 と言ったりもします)の前に既に書いてあるので、ここでは②から始めます。
②(当事者の約束ごと)に相当することが第1条と第4条に書いてあります。売主はある「商品」を引き渡すことを約束し、買主は「代金」を支払うことを約束します。どんな商品かは第1条に、いくら払うかは第4条です。
③(契約をどう実行するか)ですが、まず第2条で注文のやりとりがあって、商品の数量と、いつ引き渡すかが決まり、第3条(これは売主のすべきこと)と第4条(買主のすべきことは支払い)で、実務の詳細が決まります。第6条はいつ「売主のもの」が「買主のもの」になるかを示しています。売主は商品の所有権を買主に渡す必要がありますね。
④(契約どおりでなかったら?)。商品の売買では、約束された数量を引き渡すことに加えて(これは第3条にあります)、商品が約束通りの品質、内容であることが大事です。第7条で売主はそれを保証しています。一方買主は商品を受け取ったときに数量や、品質が契約通りかどうかを第5条に基づいて確かめます(検品は後日のこともあります)。第7条の後半には、商品が保証したとおりでなかったら、売主は何をするかが書いてあります。
⑤第8条の不可抗力には、例えば天災地変や、政府の法律などのため取引が約束どおりに出来なくなったら、どうするかが書いてあります(第1話にこの規定が長大になりうる話を書いておきました)。
⑥第9条から第16条までは、契約の運用のための規定です。日本の契約書では見かけないものもあります。特に第12条、第14条、第16条は、英国法の伝統に根ざすものです。このほかに、第9条、第10条、第11条は国際契約に一般的にある条項と言ってよいでしょう。
国際契約では……
国際契約の特徴は⑥(⑤も)がとにかく、しつこく長いことです(☚これがポイント)。
当事者自治の面目躍如というところです。