第33話 一般条項(4)ー紛争解決条項ほか
Dispute Resolution/Enforcement:紛争の解決方法/権利の行使
紛争が起こったときにどのような方法で解決するかなどについて書いてあります。具体的には次項以下のように仲裁、または裁判による、とするものが多いのですが、その前に当事者の責任者による直接交渉や、調停などをおくものもあります。「当事者は誠意をもって解決する」といった日本でよく見かけるような文言も、多くはありませんが、存在します。
直接交渉を規定した、興味深い例をあげておきましょう。
Arbitration:仲裁
仲裁は当事者の合意によって、仲裁機関の判断を仰ぐものです。裁判の判決に当たる「仲裁判断」は、その執行力が、条約などによって担保されているので、国際取引契約の多くに紛争解決の手段として、取り入れられています。「紛争解決は仲裁による」という合意、その手続きなどを規定します。
Consent to Jurisdiction and Forum Selection / Submission to Jurisdiction / Venue:管轄の合意と裁判地の選択
裁判による紛争解決を選んだ場合、あらかじめある裁判所を指定して、その裁判所で訴え、または訴えられることに異議がない、ということに合意しておく方が、面倒がありません。’Jurisdiction’ は「管轄」、’Submission to’ は「……に服すること」、’Venue’ は「裁判地」を表します。
Waiver of Jury Trial:陪審裁判の放棄
陪審員は一般人です。そこで法的にも複雑な商取引に関する裁判で、あらかじめ陪審員の関与を排除しておこうという取り決めです。
Service of Process / Consent to Service of Process:訴状の送達
訴状(’Process’)は被告の住所に送達(’Service’)するのが原則ですが、外国に訴状を送るのは色々な困難がともなうので、原告のいる国の中に受取代理人を指定させる条項です。
Specific Performance / Injunctive Relief:特定履行/差し止めによる救済
英米法では、契約違反の原則的な救済は金銭による損害賠償です。しかし違反の内容によっては、金銭賠償では不十分なことがあります。そこで、「約束したことを実行せよ」という判決を受け入れることを約束しておくものです。
また、秘密の漏洩などの場合に、悠長に損害賠償を求めていたのでは、手遅れになります。そこで裁判所にとりあえず「これこれのことを禁止する」といった決定を求めることが出来る、と合意しておくのです。
Governing Law / Proper Law / Controlling Law / Choice of Law:契約の準拠法
契約がどこの法に準拠するかです。第14話から第16話もご覧下さい。
次回にもう少し紹介します。
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