【小人と僕:00話】一緒に何を探そうか
ベンチに腰かけていたのは
なんてことのない人間と
手のひらの大きさの小人だった
小人「僕さんは、何をしているんですか?」
僕 「僕は何もしていないをしてるんだよ。誰もいない公園で、雲を眺めたり、葉っぱの擦れる音を聞いたりして、皆の場所を独り占めして優越感に浸っていたんだ」
両肘を掛け、大きく空を見通した。
雲が多くて、たまに陽が差す程度の晴れの日だ。
僕 「小人さんは何をしていたんだい?」
小人「私は探し物を探していました』
僕 「探し物?」
小人「探し物を、探しています」
視界に小人はいないのに
彼女はうつむいて
欲のない顔色をしているのが
声色から伝わってくる
小人「何かを見つけないといけません」
僕 「なにか」
小人「そう、なにか」
間。
撫ぜるように、風が一度だけ吹いた。
小人「私は。探し続けていないと、気持ち悪い。停滞していることが、気持ち悪い。いつまでたっても何も進まない、変わらない、呼吸をしているだけ、ただ身体を消費して、食べて、また消費して。何も始まらない。向かう場所もない。何かを見つけないと、探していないと、思考をとめてしまったら、この世界で何も為しえないことになる」
彼女を見下ろしたら
彼女もこちらを見上げていた
小人「僕さんは、何をしているんですか?」
何故なにもしていないのですかと
そういう意味か
イマドキの、いわゆる"意識高い系"ではないんだ
彼女の中の焦燥感は
「人間」なんかより
よっぽど大きくて、重い
僕 「何もしていなかったし、何をするつもりもなかったのだけど。良かったら、小人さんの探し物を一緒に探させてはくれないかな。本当に、今の僕には何もないから」
小人「いいんですか?」
僕 「いいよ。お互いの知らないことを知り合おう。見てみたい場所があれば連れていくよ。これも何かの縁だろうし」
小人「ありがとうございます。また明日、同じ時間にここで良いですか」
僕 「わかった。じゃあ、また明日」
続く
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「嫌われる勇気」を読んで、対談形式で話をつくってみたいと思いました。
よろしくお願いいたします。
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