週刊俳句上原(第24巻53号)
ゑひ[酔]では、毎週日曜日に、上原ゑみの新作の俳句を発表します。毎週5句発表です。
数へ日の床下に水溜まりをり
補助錠をがりがり外し花アロエ
冬休み銀のフォークを拭き進め
窓に霜伸びて絵本を丸暗記
両親のくつついてゐる霜夜かな
以前住んでいたマンションで、泥棒に入られたことがある。長期休暇の旅先から帰ってきた夜だった。玄関のドアが半開きで、中を覗くと我が家の電話の受話器を耳に当て、こちらに顔を向ける男性がいる。見つめ合った数秒が感覚としては途方もなく長く感じられた。しかしその男性は泥棒ではなくマンションごと加入していた警備保証会社の社員で、警報が鳴ったのを受けて駆けつけたらリビングの窓ガラスの施錠部分が割られており110番していたところだという。泥棒は未遂のまま逃亡した。被害に遭わずに済んだのは、窓に補助錠を付けていたからだった。泥棒がガラスを破ってクレセント錠を捻り窓をひらこうとしたとき、下部に取り付けてあった補助錠がそれを阻んだ。窓の振動をキャッチした警報音がワンワン鳴ったことに驚いて逃げたということらしい。その後はさらに大騒ぎになった。そのころは近所に泥棒が頻出していたそうでパトロール強化中、通報を傍受した付近のパトカーが一斉に集結、我が家が大量のお巡りさんでいっぱいになってしまったのだ。有り難い話だがいくらなんでも人数が多過ぎる。そんな彼らが立ったまま取り囲む中(座るスペースは無い)、いちばん高圧的な警察官が私の調書を取り始めた。乱暴な口調で詰問され、ほぼ怒られているに近いやりとりが疲労に拍車をかける。そこへ新たな2人の刑事がやって来た。すると警察官の態度が一変、みるみる萎んで、部屋に溢れる仲間の中に紛れ込んでしまった。警察組織は実にわかりやすい縦社会なのであった。刑事さんたちは、どちらが犯罪者だかわからないといった風情・風体、やはりそれぐらいの迫力がなければ務まらない仕事なのだろうなと、内心ウケつつも納得である。とても気さくな方たちで、犯人の足跡を取る様子に関心を抱く私に、道具を見せてくれたり解説してくれたりする。なんだかんだ夜中まで、興味深い “見学” は続いた。後日捕まった泥棒は、3ヶ月前に失職して生活が困窮し、初めて侵入した家での盗難がビギナーズラックでうまくいき、これはイケるとチャレンジした2軒めがうちだったそうだ。1軒めの盗品を無防備に売りさばいたことで足がついた素人、単独犯、それも警報音にビビって逃げるぐらい小心だったから難を逃れることができた。が、今年の泥棒は様相が違う。補助錠、私は下部に取り付けていたけれど、破りにくいのは上部への取り付けだと防犯の専門家が言ってました。では上にも下にも取り付ければ、あまり考えたくはないが万が一、在宅中に窓を破られる音を聞いてしまった時の時間稼ぎにはなるかもしれない。年末の防犯対策のご参考までに。