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ゑひ[酔]では、毎週日曜日に、上原ゑみの新作の俳句を発表します。毎週5句発表です。

日短か列車の椅子を逆向きに 
大皿を持ち込む冬の泉かな
冬は行かない高窓の陽に褪せて
ストーブを囲み小枝をいぢつてをり
ストーブの管の貫く我が家かな 

ノルウェーの昔話
『三びきのやぎのがらがらどん』
絵 マーシャ・ブラウン 
訳 瀬田貞二
福音館書店 (1965年)

 むかし、三びきの やぎが いました。なまえは、どれも がらがらどん、と いいました。
あるとき、やまの くさばで ふとろうと、やまへ のぼってきました。
のぼる とちゅうの たにがわに はしが あって、そこを わたらなければなりません。
はしの したには、きみのわるい おおきな トロルが すんでいました。
ぐりぐりめだまは さらのよう、つきでた はなは ひかきぼうのようでした。

 さて はじめに、いちばん ちいさいやぎの がらがらどんが はしを わたりに やってきました。

かた こと かた こと と、はしが なりました。

「だれだ、おれの はしを かたことさせるのは」
と、トロルが どなりました。

「なに、ぼくですよ。いちばん ちびやぎの
がらがらどんです。やまへ ふとりに
いくところです」
と、その やぎは とても ちいさい こえで いいました。

「ようし、きさまを ひとのみにしてやろう」
と、トロルが いいました。

「ああ どうか たべないでください。ぼくは こんなに ちいさいんだもの」
と、やぎは いいました。
「すこし まてば、二ばんめやぎの がらがらどんが やってきます。ぼくより ずっと おおきいですよ」

「そんなら とっとと いってしまえ!」と、トロルは いいました。

 しばらくして、二ばんめやぎの がらがらどんが はしを わたりに やってきました。

がた ごと がた ごと と、はしが なりました。

「だれだ、おれの はしを がたごとさせるのは」
と、トロルが どなりました。

「ぼくは 二ばんめやぎの がらがらどん。やまへ ふとりにいくところだ」
と、その やぎは いいました。まえの やぎほど ちいさいこえではありません。

「ようし、きさまを ひとのみにしてやるぞ」
と、トロルが いいました。

「おっと たべないでおくれよ。すこし まてば、おおきいやぎの がらがらどんが やってくる。ぼくより ずっと おおきいよ」

「そうか、そんなら とっとと きえうせろ」
と、トロルが いいました。

 ところが、そのとき、もう やってきたのが おおきいやぎの がらがらどん。

がたん ごとん がたん ごとん と、はしが なりました。あんまり やぎが おもいので、はしが きしんだり うなったりしたのです。

「いったいぜんたい なにものだ、おれのはしを がたぴしさせるやつは」
と、トロルが どなりました。

「おれだ! おおきいやぎの がらがらどんだ!」
と、 やぎは いいました。それは ひどく しゃがれた がらがらごえでした。

「ようし、それでは ひとのみにしてくれるぞ」
と、トロルが どなりました。

「さあこい! こっちにゃ 二ほんの やりが ある。これで めだまは でんがくざし。おまけに、おおきな いしも 二つ ある。にくも ほねも こなごなに ふみくだくぞ!」
こう、おおきいやぎが いいました。
そして トロルに とびかかると、つので
めだまを くしざしに、ひずめで、にくも
ほねも こっぱみじんにして、トロルを
たにがわへ つきおとしました。

 それから やまへ のぼっていきました。
やぎたちは とても ふとって、うちへ あるいてかえるのも やっとのこと。もしも あぶらが ぬけてなければ、まだ ふとっているはずですよ。そこでー
チョキン、パチン、ストン。
はなしは おしまい。

「餃子倶楽部」様の記事より引用・編集
https://blog.goo.ne.jp/gyozaclub/e/d4c345076328d0ec860fe2e3be888db1

 幼い頃に読んだこの絵本、好きというより怖くてずっと覚えていた。とにかく絵に癒されない。私がいちばん怖かった “おおきいやぎのがらがらどん” の顔のズームアップは、福音館書店さんのサイトで確認可能なので、それも良かったらご覧になってみてください↓

 改めて読んでみると文章も怖い。「でんがくざし」(田楽刺し?) を、幼児だった自分が理解できていたとは到底思えないが、ほか、ぐりぐりめだまのトロル、こなごな、こっぱみじん、そしてがらがらどん、といった文中の随所に置かれる濁音の効果が抜群。また、かたことかたこと→がたごとがたごと→がたんごとんがたんごとん、と音の変化で山羊の大きさを見せるところ、締めに置かれた謎の「チョキン、パチン、ストン」など、音が主力の日本語訳に、子ども上原は掴まれた。読み聞かせにも非常に向いていて、特例とは思うが歌人の俵万智さんは三歳でこれを丸暗記してしまったらしい。

 ストーリーから何らかの教訓を得ることもできるのだろうだが、私が長々と紹介したかったのは音やリズムの魅力のほうで、原典(ノルウェー語)や英訳本に当たればさらに気持ち良く韻を踏む文章の楽しさを味わうことができる。子どもの頃に受けた強い印象が、俳句を作るようになった今の感覚に繋がる。究極、俳句もこういうことなんだろうな。
 にしても、それと今回発表の俳句の中身にいったい何の関わりが???だったと思いますが、実は個人的にはストーブと大いに関係していて、この『三びきのやぎのがらがらどん』のレリーフが付いた薪ストーブの存在を後年知って、以来欲しくてたまらないのです。これなんですけどね ↓
https://images.app.goo.gl/hFsudSmGvRUNDSr78


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