ゑひ[酔]では、毎週日曜日に、上原ゑみの新作の俳句を発表します。毎週5句発表です。
日短か列車の椅子を逆向きに
大皿を持ち込む冬の泉かな
冬は行かない高窓の陽に褪せて
ストーブを囲み小枝をいぢつてをり
ストーブの管の貫く我が家かな
ノルウェーの昔話
『三びきのやぎのがらがらどん』
絵 マーシャ・ブラウン
訳 瀬田貞二
福音館書店 (1965年)
幼い頃に読んだこの絵本、好きというより怖くてずっと覚えていた。とにかく絵に癒されない。私がいちばん怖かった “おおきいやぎのがらがらどん” の顔のズームアップは、福音館書店さんのサイトで確認可能なので、それも良かったらご覧になってみてください↓
改めて読んでみると文章も怖い。「でんがくざし」(田楽刺し?) を、幼児だった自分が理解できていたとは到底思えないが、ほか、ぐりぐりめだまのトロル、こなごな、こっぱみじん、そしてがらがらどん、といった文中の随所に置かれる濁音の効果が抜群。また、かたことかたこと→がたごとがたごと→がたんごとんがたんごとん、と音の変化で山羊の大きさを見せるところ、締めに置かれた謎の「チョキン、パチン、ストン」など、音が主力の日本語訳に、子ども上原は掴まれた。読み聞かせにも非常に向いていて、特例とは思うが歌人の俵万智さんは三歳でこれを丸暗記してしまったらしい。
ストーリーから何らかの教訓を得ることもできるのだろうだが、私が長々と紹介したかったのは音やリズムの魅力のほうで、原典(ノルウェー語)や英訳本に当たればさらに気持ち良く韻を踏む文章の楽しさを味わうことができる。子どもの頃に受けた強い印象が、俳句を作るようになった今の感覚に繋がる。究極、俳句もこういうことなんだろうな。
にしても、それと今回発表の俳句の中身にいったい何の関わりが???だったと思いますが、実は個人的にはストーブと大いに関係していて、この『三びきのやぎのがらがらどん』のレリーフが付いた薪ストーブの存在を後年知って、以来欲しくてたまらないのです。これなんですけどね ↓
https://images.app.goo.gl/hFsudSmGvRUNDSr78