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【取材旅行】奈良県立万葉文化館

「万葉集」…日本人なら誰しもが触れたことのある言葉ですよね。
私と万葉集の出会いは普通に教科書でした。
中学生の頃の国語の教科書に載っていた防人の歌や東歌。
「このように東国の歌も載っていて、この歌には私たちの住む世田谷区を流れる多摩川が登場するんですよ」と。
「多摩川に晒す手作りさらさらに…」
そのフレーズだけがずっと印象に残っていました。

…それから数年後には大学で万葉集を学び、「いつか飛鳥時代の小説を書こう」となり今に続くわけですが…。

そんな私ですのでやはり「万葉」とつくと引き寄せられてしまうのですね。

広々とした駐車場からエントランスに向かうと万葉の花が植えられていたり、
館内にも万葉集に歌われた花をガラスで再現した天井装飾があったりと、万葉人気分をそそられます。

設立は2001年とのことですが、もっと新しく感じられるような広くて綺麗な博物館です。

愛犬オルさんとドライバー(夫君)を残しての来館だったので、特別展はスルーさせていただくことにしたものの、どこに向かえばいいのかエントランスで迷子に(笑)。
受付で聞くとボランティアのおじ様がガイドをして下さることになりました。

万葉集に歌われた花で一番多いのは萩であること(でも天井装飾には花が細かすぎて断念したとか)、また「令和」の年号のきっかけの歌会の話などを明るくお話してくださいました。
(それらの歌会のイメージが濃すぎて、梅が一番多いと思ってましたよ、私)

更に「ここから富本銭が出てきたんですよ!」と池工房の遺跡をご説明くださいました。

池遺跡

そうです、この万葉文化館は池遺跡の上に建っているんです。
「外に出てご覧いただくこともできますが…暑いので…」
「…そう、ですね」とやんまり辞退させていただき、涼しい館内で富本銭についてのお話を伺いました。

説明板

富本銭はそれまでも見つかってはいたものの、私銭のように考えられていて、「和同開珎が日本最古の通貨」と教科書で習って来ていましたが、今では「富本銭が最古」と教科書の改訂も進んでいるとか。

池遺跡案内板2

遺跡の発見でまだまだ古代の歴史は覆るのですよね。
埼玉の和同開珎の工房遺跡を見たときの感動があったので、ちょっと複雑な気分にもなる関東人の私ですが(笑)。

今回色々なボランティアガイドさんたちとお話して感じたのは「奈良は日本の中心だった!奈良にはすごい歴史がある!!」という誇りです。
京都に押されがちですが、やはり「日本」の礎はここ奈良だぞ!ともっと発信してしかるべきなんですよね。

復元遺構のマップと復元遺跡

この池工房だけでもけっこうな情報量ですが、本展示はこの先です。
そこに辿り着くまでにも万葉集に出て来る日本の土地土地を日本地図で説明した図があったり(写真を撮り忘れて後悔しています!)と、館内はゆっくり見ると半日かかるボリュームです。

その日本地図を眺めていて「富山の高岡の万葉歴史館に行ったことが」という話をガイドさんにすると「この文化館にも高岡からご来場された方のお話を聞いたことがありますよ。何かのフォーラムの時に…」と。
「万葉」という言葉についふらふらと引き寄せられしまう同士を見つけたような気分になりました。
(高岡の万葉歴史館の話はまた別の機会に…)

貯めこみおじいちゃん

広い展示ブースに足を踏み入れると、等身大の万葉人が迎えてくれます。
タイトル写真にしたのは「歌垣」の様子で、ガイドさんが熱く語ってくださいました。
一言で言うと「合コン」ですね。大学の教授すらそんな感じで説明してくれた記憶。
昔は名前を聞く=求婚でしたが、今風に解釈すると「ね~ライン教えててよぉ」「え~今日会ったばっかの人には無理じゃね?」って感じのやりとりが万葉集に残っています。
それをガイドさんが説明してくれますよ~。

そしてまた富本銭が登場!
上の写真の野菜売りのおじいちゃん、足元に富本銭を通したものをこっそり持っています。
「当時は富本銭はなかなか流通しなかったはずですが、このおじいちゃんなかなか溜め込んでますね」と話してくれたのが、ツボでした(笑)。

そうなんですよね、和同開珎もですが飛鳥時代にどれくらい通貨が流通していたかは謎なんですよね。
庶民は物々交換が主だったと考えられていますし…。
ですが海柘榴市のような市では案外通貨での商売が多かった可能性もゼロではないのでは?などと想像してみたり…。

余談ながら…里中御大が『長屋王残照記』の中で、和同開珎を広めるために長屋王が家の者に市では通貨を使うように命じる場面があるのですが、妻の吉備皇女が「ネックレスにしたら?」と提案して「そういうことじゃない」とたしなめられるところが好きです。
けっこう当時のリアルじゃないかな?と。そのくらい「貨幣とは何ぞや?」だったと思うんですよね。

職人の小屋

館内のこの万葉人の暮らしの実物大復元は細部にもこだわりがあって「ここまで!」と感心しきりでした。
小屋の造りもリアルですし、それぞれの人物の服装や手にしている小道具までもが忠実に再現されています。

器売りのおじちゃん

この土器のレプリカも作ったんだ…と感心。
竈らしきものなど、大きさの感じがつかめるのも等身大ならでは。

そして人物が良いですね。
私、トルソーとか恐い派なんですが、ここの人形は怖くなかったんですよ。
それは表情がい豊かで生き生きしているからじゃないかな?と。

小学生の頃、足尾銅山の復元人形は本当に怖かった・・・!!
ですが、この館内は子供たちも楽しそうにしていました。子供が怖がらずに楽しめるって大事なポイントだと思います。そこから興味が生まれて未来の歴史学者が生まれるかもしれませんからね。

AI搭載の官人人形もいて、質問に答えてくれるのですが、こちらも子供たちに囲まれて人気者でした。
(平日でしたがご家族連れも多かったです。明日香エリアって子供向けは少ないので、ここは貴重ですね)

官人

この木簡の再現もすごいですよね!
他にも万葉人の筆跡を紹介するパネルもあったり、
キトラ古墳の中にいるイメージになれる小ブースもあったり、
当時のことや万葉集歌を紹介するモニターのある小屋があったり、
映像ブースもあったり…
やはり半日つぶれますね、ゆっくり見ていくと。

またちょっと余談ですが、キトラ古墳の被葬者は私は高市皇子を充てていますが、ガイドさんもはっきり「高市皇子」とおっしゃってて「ですよね!」となりました。

ガイドさんとお別れしてから気になる場所をもう一度巡って、帰りに寄ったのは…ミュージアムショップ♪
私、ミュージアムショップ大好きなんですよ。国内外問わず絶対チェックしてます。
こちらのミュージアムショップは広くて見やすくて、とても良いです!星五つ差し上げたい!
今回は資料も買いたかったのですが…買い切れない。気になる図録や冊子がありすぎました!
そしてなんと!里中御大のグッズまで・・・!!!
オタク心が高鳴りやばい…やばいですよ、ここは。
駐車場に里中御大の歌碑までありますからね!
更には奈良のお土産コーナーもありましたが、センスのいいお菓子やお茶や雑貨が並んでいて「もう奈良町とかまで行けなくても、お土産ここで買えばいいよ」と思えるくらいでした。(そして買いました)
オススメは富本銭クッキー。歴史好きのご友人がいたら是非。

…ここまでで二日目午前中です。
まだまだ続きます…!!!


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