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地獄の描写はどこまでOK?地獄絵本ブームで思う道徳教育の境界線

今回「ガチの(仏教的)地獄」を描いた絵本を取り上げたいと思います。

地獄とは昔から世界中のさまざまな文化や宗教にある概念です。中でも、仏教ではカルマ(業)や輪廻と関連づけられます。

絵本で描かれる地獄は、エンタメもの以外だと「悪いことをするとこんな目に遭うよ」という教訓のために作られることがあります。

しかし、絵やお話がリアルであればあるほど、取り扱い注意です。

「有名な作品だから」とか「道徳教育のために」などと思ってうっかり内容を知らずに読んでしまい、子供が必要以上に怖がってしまうと大変です。
子供に合うかどうか…この匙加減が難しい!


ということで、今回は恐くない順に絵本を紹介していきます。
良かったらぜひ参考にしてみてください。


1.恐くない

地獄のそうべえ /  たじまゆきひこ 作


「とざい、とうざい。かるわざしのそうべえ、一世一代のかるわざでござあい。」

綱わたりの最中に、綱から落ちてしまった軽業師のそうべえ。気がつくと、そこ は地獄。火の車にのせられ、山伏のふっかい、歯ぬき師のしかい、医者のちくあんと三途の川をわたってえんま大王の元へ。4人はふんにょう地獄や、針の山、熱 湯の釜になげこまれ、人を食べる人呑鬼にのみこまれます。

そうべえたちははたして生き返ることができるのか、あとは読んでのお楽しみ。

出版社の紹介

対象年齢…3、4歳から

桂米朝の上方落語「地獄八景亡者戯」(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)がもとになった本。超有名なロングセラーなので、タイトルだけでもご存知の方は多いでしょう。


わが家の子供達はそうべえに憧れ、公園の柵で軽業師の特訓をしていました。



地獄でさまざまな「◯◯地獄」に遭遇しながらも、たくましく乗り切るそうべえたちの愉快な冒険譚です。ふんにょう地獄など「こんな地獄イヤー」と親子で笑ってしまいます。
読み手は、コテコテの関西人になりきるのが楽しい。セリフがクセ強で頭に残ります。

もし、お子さんが気に入ったのであれば、続編もたくさん出ているのでオススメです!



恐怖!おばけやしきめいろブック 地獄めぐり

地獄よいとこ一度はおいで!
思うぞんぶん、こわがってちょうだい!

“恐怖! おばけやしきめいろシリーズ"第4弾!
ドキドキしながら集中力UP!

出版社の紹介

対象年齢…3、4歳から

めいろやさがし絵、4コママンガなどが楽しめる「遊びブック」です。

裏表紙


地獄各所で罪人が酷い目に遭っていますが、マンガ絵なのでよほど想像力が豊かでない限り大丈夫かと思います。裏表紙を拡大して参考にしてみてください。


2.ちょっと恐い

キャラ絵で学ぶ!地獄図鑑 /   山折哲雄 監修 いとうみつる 絵

怖くておもしろい地獄について、怖カワいいイラストをふんだんに使いながら徹底解説します。この1冊で、地獄がどんなところか丸ワカリになります。

イラストがカワイイので、恐ろしい設定もそんなに怖がらずに読み進められます。さぁ、みなさんも、楽しく学んで、楽しく怖がりましょう!!!

出版社の紹介

対象年齢…小学生から

地獄の説明がとにかく明るくかかれていて、ホントに恐くないし、勉強になる!
仏教を学びたい人にもおすすめです。

等活地獄…生前に殺生や暴力行為を行った者が堕ちる地獄。
「殺される→蘇生→再び殺し合う」のサイクルが永遠に続くそう。


めちゃくちゃ売れているらしく、Amazon贈り物ベストセラー3位になっていました。
「ちょっと恐い」にしたのは、キャラはコミック調だけどやはり残酷描写は避けられないので。


ようこそ地獄へ /   広松 由希子 作 100%ORANGE 絵

人は生きているときにわるいことをすると、死んだら地獄におちるといわれています。
地獄なんてない、という人もいますが、ほんとうにそうでしょうか。

12世紀の日本でうまれた絵巻『地獄草紙』から想像をふくらませて現代によみがえった地獄をめぐり、地獄とはなんなのか考えてみましょう。

出版社の紹介

対象年齢…4、5歳から

「まる さんかく ぞう」や「エルメスのえほん」でおなじみ、100%ORANGEによるポップでキャッチーなイラストが魅力。しっかりと地獄の世界が解説されています。

個人的には、鬼の顔が標識のようにかわいくデザインされた表紙がお気に入り。さっそくわが家で読み聞かせました。

地獄を人間の子供たちが案内人に見学させてもらいます。前半はソフトな道徳教育なものの、だんだん内容がハードになってきます(ポップな残酷描写)。

怖がりやの下の子にはちょっと危ういなぁと内心焦りました。可愛く描かれているので、何とか大丈夫でしたが、読む前に一度ご確認を。最後の方は畳みかけるようにさまざまな地獄のオンパレードです。


地獄めぐりの橋  /   青山邦彦 作

不思議な伝説がある井戸を下りるとそこは、鬼達が忙しそうに働く地獄の世界だった・・・!

鬼につかまり、閻魔殿の裁きの間へ連れ出される“ぼく”。
そこには「浄玻璃の鏡」や「人頭杖」があり、ぼくの悪い行いがさらけ出され、
あわや「炎地獄」に放り込まれそうになってしまう。

そのとき助けてくれたのが小野篁という人だった。“ぼく”を元の世界に戻してくれるついでに、地獄を案内してくれることに・・・・・・。

出版社の紹介


対象年齢…小学校低学年から

京都の古刹・六道珍皇寺の“地獄につながる井戸”と小野篁(おののたかむら)伝説がモチーフとなった絵本だそうで、お話自体は面白いです。
雑誌の付録だったときに好評だったので、書籍化されたようです。

ただし、サイトには出版社の注意書きがあります。

地獄は地獄らしく、オブラートに包まずに描いた地獄絵図が繰り広げられます。(刺激の強いページもありますので、ご注意ください。)

出版社の紹介より

そう、人が鬼に刺されているシーンなどがあるんですねー。私は何も知らずに読み聞かせはじめたので、ページをめくった途端ギョッとなってしまいました。緻密な絵が魅力の作者さんなので、画力が高くて…。

もちろん、子供は怖がってしまいました。まぁ事故みたいなものですね。本との相性もあるので、仕方がありません。


3.ちゃんと怖い

水木少年とのんのんばあの地獄めぐり / 水木しげる

人は死んだら、どこへ行く…?
水木少年は、のんのんばあに連れられて、
地獄へ行ってみた…。

出版社の紹介

対象年齢…小学生から大人まで

「ゲゲゲの鬼太郎」の作者水木しげるさんが描く地獄。水木さんが子供の頃におばあちゃん(のんのんばあ)にお寺に連れられて行ったときに眺めていた地獄絵がルーツになっているそうです。
調べたところ、昔はお寺に地獄絵が飾られてることは珍しくなかったそうです。そうやって道徳教育が行われていたのでしょうか。

さすが水木さん、絵もお話もクオリティが高い!!コミックと違い、大判は迫力があって画集を観ているようでした。
ホラー系が好きな人に是非!という感じです。


絵本 地獄  /   宮 次男 監修   白仁 成昭・中村 真男 構成

しつけに最適と、にわかに大ブーム!
悪いことをしたら地獄に落ちる──その真意は命を粗末にするなとのメッセージ。

千葉・旧安房郡延命寺秘蔵地獄絵巻をもとに、死ぬことの怖さ、
命の大切さを子供たちに培うロングセラー絵本。

出版社の紹介

対象年齢…小学校中学年から(にしてはいかが)

江戸時代後期に描かれた「地獄」の絵を抜粋してストーリーを付けたもの。
いっとき、テレビで「しつけに効く」と話題になっていたそうです。

話もおどろおどろしいし、当時の絵を使ってるから、新規の創作絵本だったらコンプラ的にアウトであろう暴力表現もセーフになっています。

本の帯には漫画家東村アキコさんのコメントが。「うちの子はこの本のおかげで悪さをしなくなりました」

お子さんは当時おいくつだったんだろう。

これは家庭の方針と子供の耐性を見極めて、読むか読まないかに分かれますね。
2、3歳だと訳が分からなさすぎで逆に大丈夫か?…いや、なかなかのグロさよ?

ただ、最後のメッセージ「子どもたちよ、いのちをそまつにするな!」はとても良いと思いました。

さいの河原。親より先に死んだ小さな子供たちが集められているところ。
小石を積んでは鬼に崩される。


わが家では6歳児におそるおそる読み聞かせたところ、不穏な雰囲気を感じたようで、序盤で「なんかイヤ」とギブアップされました。
でも、最初の方でリタイアしてくれてホッとしてます。たぶん、同じ年齢でもホラー好きの上の子だったら大丈夫だったと思います。


終わりに

ということで、参考になりましたでしょうか?

しつけという観点では、恐ろしく描かれていればいるほど、即効性はあるでしょう。

その代わり、長期的な目線では現代の「対話」や「共感」を重視する理想的な道徳教育とは離れていきます。
地獄の絵本に関しては、読み手は慎重に選書する必要があるなと思いました!

もし、何か思うところがあれば、良かったらコメントお待ちしてます。

次回から明るくハッピーな感じでいきますね!

それでは、またお会いしましょう〜

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