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橋渡し
昔、実家に伝統工芸品が送られてきたことがある。興味津々で開梱したところ、恐ろしい形相の能面が現れ、背筋が凍った。どなたかが魔除けにと贈ってくださったそうだが、私には呪いの面にしか見えず、とにかく目に入らないところに仕舞ってもらった。そうでなくても、幽玄の美など自分の理解の範疇を超えており、能楽教室は狂言だけを楽しみに耐えるのが常だった。だからもう一生、お能の世界に触れることもなかろうと思っていたのだけれど…。このところ苦手克服キャンペーン実施中につき、表紙からして不気味なこの1冊を手に取った。
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能面師の祖父の家で夏休みを過ごすことになった小学4年の宗太。肝試しに祖父の仕事場に誘われる。(▶️その様子はこちらから少し読むことができるので、よろしければどうぞ。)
なんと能面は250種類ほどあるという。そのうち本書に出てくるのは小面、生成、顰、獅子口、般若、真蛇、小飛出、小喝食の8種類。
わが家に送られてきたのは「真蛇」だったと初めてわかる。やっぱり怖いものは怖い。でも、この本は大丈夫。祖父から面の打ち方を教わる宗太の目線で描かれているため、お能の知識がない読者でもとっつきやすく、おかげで能面恐怖症も軽減した。
佐藤まどかさんは実在の能面師への取材も経て本作を執筆。デザイナー出身の著者だからこその着眼点と、アンマサコさんのリアルで秀逸な描写が光る1冊。(おふたりのサイン入りのこの本は、ブックハウスカフェで入手可能。)
これに勇気づけられて、つづいて文楽の世界へ。
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この本は読書家 noter おうみのひとさまのご紹介記事で知ることができて、有難かった。ちなみにこちらは大人向け。
人形劇が好きな私でも、いざ文楽となると、お能と同様、難解で近寄りがたいイメージを抱いていた。それが一気に崩れるほどのインパクト。太夫の修業に励む弟子の心情が、実際の演目と重ねて表現され、芸を昇華させる過程が描かれる。とはいえ、堅苦しさは微塵もない。ユーモラスで情感たっぷりな筆致に引き込まれ、どんどん読み進めることができた。
そのクライマックスとなる演目「仮名手本忠臣蔵」の「勘平腹切の段」をより
理解するために、こちらの絵本も取り出してみた。
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『仮名手本忠臣蔵』は実際の赤穂事件に脚色が加わっている分、登場人物が複雑なため、絵本でおさらいできるのは有難い。凡人には敷居の高い伝統芸能には、こうした橋渡しが必要と思うのは私だけ?
最後に、川端誠さんの落語絵本のご紹介を。子供にもわかるように楽しく落語の世界に誘ってくれるシリーズ。クレヨンハウスでも一部品切れ中なのが気がかり。ぜひ重版していただきたいと願っている。
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『いちがんこく』2004年
『まんじゅうこわい』1996年
(クレヨンハウス)
こんな具合に苦手と向き合ううちに
気がつけば芸術の秋に🍂
どうぞ皆さまも
深まりゆく秋を
お楽しみください🍁