絵本のある風景:ヒーロー
3歳になったばかりのTくんは車が大好き。1歳を過ぎて入園したころは車のおもちゃを握ったままお昼寝をするほどでした。そろそろスモールさんシリーズの『ちいさいしょうぼうじどうしゃ』はどうかなと思い、本棚に並べておきました。すると早速見つけて「これ、よんで。」と持ってきました。
はじめに消防自動車に積んである道具が描かれ、その一つ一つに名前が書き込まれたページがあります。読み手にとっては説明的で面倒くさいのですが、Tくんは興味津々でよく見ていますから、手を抜かずにちゃんと読みます。さて、消防署の出動のベルが鳴り響くと、お話は勢い良く動き始めます。消防車が現場に急行するようす、火事の現場でキビキビと働く消防士たちの働きぶりが誠実に描かれています。2階に取り残された女の子を助けるところは、まさにヒーロー。かっこいいのです。火が消えたことを確かめ『もう大丈夫です。』と宣言し、ゆっくり走って消防署に帰ります。
この本を春から夏にかけて、何度となく読んだTくんは、秋になり「おおきくなったら、しょうぼうしになるの。」とソフトブロックをつなげて作った消火ホースを手に、消防士ごっこを始めました。
大人の仕事は子どもや社会を守ること。消防士だけでなく、誰もが与えられた場所で、与えられた仕事を誠実に実行することでヒーローになれる。そんなメッセージを感じるお話です。Tくんはそれを感じ取ったからこそ、大きくなったらそういう大人になりたいと言ったのだと思います。