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プログラミングの種をまく(3)
付箋の数がプロの証
金曜の夜。美咲は次の日の授業で使うスライドを見直し、ため息をつきました。
「<h1>は見出し、<p>は段落...HTMLのタグの説明、やっぱり多すぎるかな...」
スクリーンには、整然と並んだタグの一覧が光っています。
先週までの経験から、生徒たちの反応を予想することの大切さを学んでいます。ChatGPTとの対話でも、「小学生が不安に感じやすいポイント」について話し合っていました。
「そうだ、参考書を持って行こう。私自身もいつも側において確認しているもの」
💻
土曜日の朝。その日はプログラミング名刺作りの授業です。
「じゃあ、今からみんなでよく使うタグを探していこう。自分の名刺に使いたいものから始めてみよう。例えば、名前を大きく表示したい人は<h1>タグ、趣味を書きたい人は<p>タグ...」
生徒たちは、自分の作りたい名刺のイメージと照らし合わせながら、メモを取り始めました。
そんな中、真面目な女子児童の美咲(同じ名前の生徒)が、不安そうな表情で手を挙げました。
「先生...HTMLのタグ、全部覚えないといけないんですか?私、暗記は得意じゃなくて...」
教室の空気が少し重くなります。他の生徒たちも同じことを考えていたようです。
美咲先生はにっこりとして、カバンから分厚い本を取り出しました。 「これが私のHTMLの参考書。でもね、私も全部は覚えてないんだよ」
「えっ?」 生徒たちの目が丸くなります。
「でも先生、すごいプログラム作れますよね?」
「そうそう、大事なことに気づいたね」 美咲先生は立ち上がって、黒板に大きく書きました。
『プログラミングで大切なこと:
覚えること? → ×
必要な情報の探し方を知ること! → ○』
「私たちプログラマーは、よく使うものは自然と覚えるけど、それ以外は調べながら作るの。それが普通なんです」
そして、プロジェクターにブラウザの開発者ツールを映し出します。 「ほら、こうやって調べられるでしょ?これも立派なプログラミングスキルの一つなんだよ」
生徒たちの表情が明るくなってきました。同じ名前の美咲も、ほっとした様子です。
「じゃあ、今からみんなでよく使うタグを探していこう。自分の名刺に使いたいものから始めてみよう」
休憩時間、先週ゾンビゲームを提案した健一が美咲先生の所に来ました。 「先生、参考書の持ち方もプログラミングの勉強なんだね。家にあった古い参考書、次回持ってきていい?」
😀
帰宅後、美咲は日記を書きながらクスッと笑いました。 『今日は、自分の「弱み」を見せることで、かえって生徒たちの心配を和らげることができたみたい。明日は図書館で子供向けのプログラミング参考書を探してみよう。あ、ChatGPTさんにおすすめを聞いてみるのもいいかも』
愛猫のプログラムは、今日も美咲の仕事机の上で丸くなっています。その横には、タグの付箋がびっしり貼られた参考書が、頼もしげに置かれていました。
特に最近追加された、ひときわ誇らしげな付箋にはこんなメモが。
「私も、先生みたいに、調べながらプログラミングできるようになりたいです」
(次回に続く)
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