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プログラミングの種をまく(2)

大切な約束

金曜の夜。美咲は前回の経験を活かし、今度は生徒たちの「予想外の行動」にも備えようと考えていました。

「先週は健一くんのゾンビゲームの提案で、想定外の展開になったけど、結果的にはクラス全体が盛り上がったわね」

美咲はChatGPTに相談しながら、自分のパソコンの中身を整理していきます。プログラミングの解説用に画面を見せる機会も増えそうです。

「子どもたちの好奇心は素晴らしいけど、データのプライバシーやセキュリティについても、さりげなく教えていかないとね」

愛猫のプログラムが膝の上で眠る中、美咲は翌日の授業の準備を進めました。

土曜日。プログラミング名刺作りの授業が始まって30分ほど経った頃—

「先生、先生のパソコンの中身見せてよ!絶対すごいプログラムいっぱい入ってるでしょ?」

活発な男子児童の翔太が、休憩時間に美咲のノートPCに近づいてきました。その手が、既にタッチパッドに伸びています。

美咲は優しく、でもはっきりとした口調で声をかけました。 「翔太くん、プログラマーには大切なルールがあるの。他人のプログラムやデータには、必ず許可をもらってからアクセスすること。これは約束なの」

「えー、なんで?先生のプログラム見たいだけなのに」 翔太は不満そうな表情を見せます。

「そうだね。でも考えてみて」 美咲は昨日準備していた例え話を持ち出しました。 「もし翔太くんが素敵なゲームを作ったとき、他の人に勝手にいじられたら嫌じゃない?プログラマーは、お互いのプライバシーを守り合うんです」

教室の空気が少し変わります。先週のゾンビゲームの話で盛り上がった健一も、真剣な表情で聞いています。

翔太は少し考え込んで、態度を改めました。 「...じゃあ、お願いします。先生のプログラム、見せてもらえませんか?」

美咲は満面の笑みを浮かべます。「その言い方、素晴らしいね!約束を守れる人は、きっといいプログラマーになれるよ」 教室の他の子どもたちも、少しずつ前のめりになってきました。

そして、プロジェクターに画面を映し出しました。 「実は、みんなに見せたいプログラムを用意してたんだ。これは先週の健一くんのアイデアから作ってみた、数学で解くゾンビゲームの試作品。どう?」

画面には、簡単な数式を解くとゾンビが人間に戻っていく様子が表示されています。翔太も健一も、目を輝かせて見つめていました。

「でも、このプログラムの中身を見せる前に、もう一つ大切なことを話そうか。『プログラマーの約束』について」

その日の授業は、意図せずしてプログラミングの倫理について考える特別な時間となりました。

夜、美咲は再びChatGPTとの対話の中で振り返ります。 『今日は予想外の質問から、大切なことを教えるチャンスが生まれたわ。子どもたちの好奇心は、時として最高の教材になるのね』

デスクの上では、次回の授業で使う「プログラマーの約束」という手作りの小冊子が、まだ途中まで描かれています。愛猫のプログラムをマスコットキャラクターにして、イラスト付きで分かりやすく説明する予定です。

ふと机の上を見ると、翔太が置いていった付箋が目に留まりました。 「ぼくも、人に見せられるプログラムを作りたいです」 美咲は微笑みながら、その言葉を小冊子の余白に書き留めました。

(次回に続く)

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