春を待ちわびる蝶のお話
「もうすぐ春かしら」
私は羽を少し震わせながら、サナギの中で考えていた。冬の間じっとしているのにも慣れてきたけれど、最近なんだか体の中がむずむずする。外の世界が恋しくなってきたの。
ある日、いつもより暖かな光が差し込んできて、私の心は期待で膨らんだ。「もしかして、春が来たのかも!」
そっと、ゆっくりとサナギから出てみることにした。羽を広げると、真っ白な世界が広がっていた。まだ雪が残っていたのね。でも、不思議と寂しくはなかった。
舞い上がってみると、春の陽気に誘われて出てきた私の姿が、真っ白な雪景色に映えているみたい。青い空に向かって羽ばたくと、雪の結晶が光を受けてきらきらと輝いている。まるで私のために用意された特別なステージのよう。
確かにまだ少し寒いわ。羽が少し震えているの。でも、この美しい光景に出会えて良かった。私の黒と黄色の羽が、真っ白な雪の上で踊るように見えるなんて。
「もう少しだけ飛んでみようかしら」
寒さは感じるけれど、この特別な瞬間を楽しみたい。春はもうすぐそこまで来ているはず。それまでの間、この美しい冬の終わりの風景を、私だけの思い出として大切にしておこう。
やがて疲れた羽を休めながら、私は微笑んだ。少し早すぎた目覚めだったかもしれないけれど、こんな素敵な発見ができて、私は幸せ。
「春が来たら、もっともっと素敵な景色に出会えるのかしら」
そんな期待を胸に、私は静かに木の枝で休むことにした。少し寒いけれど、心は温かく、希望に満ちていた。
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