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おにぎりといっしょのふゆの森
朝もやの立ち込める冬の森。
真っ白な雪が、ふわりふわりと舞い落ちていました。
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私の両手の中で、おにぎりがそっと息をしています。
「寒くない?」と聞くと、おにぎりは小さく首を振りました。
「少し寒いけど大丈夫。
お母さんが握ってくれた時の温かい気持ちを思い出してるんだ」
そう言って、おにぎりは嬉しそうに微笑みました。
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私たちは雪の積もった丸太に腰かけ、 小川のせせらぎに耳を傾けます。
「ねぇ」とおにぎりが言いました。
「この小川の水が勢いよく流れる音、
春の田んぼの水車が回る音に似てるね」
「そうなの?」
「うん。春の田んぼではね、その音に混ざって
カエルたちが元気よく鳴いてるんだよ。ケロケロって」
おにぎりは懐かしそうに目を細めます。
「お米が育つ時は、自然の音楽会みたいなんだね」
私がそう言うと、おにぎりは嬉しそうに微笑みました。
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一つ目のおにぎりを食べ終えると、
不思議と体の芯から温かくなってきました。
「ねぇ、あなたそっくりの雪だるまを作ってみようかな」
私は手袋をはめ直して、雪を丸め始めました。
まん丸なおにぎりくらいの大きさの雪だるまを、
次々と作っては並べていきます。
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「わぁ、僕の雪だるま家族みたい!」
おにぎりの声が弾みました。
私は残りのおにぎりを手に取り、
雪だるまたちを見つめながら、
ゆっくりと頬張り始めました。
森の中で、雪がさらさらと音を立てて降り続けています。
おわり
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