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しゃもじのシュート!
会社帰りのフットサルスタジアム。チームメイトと準備運動をしていたタケルは、対戦相手を見て目を疑った。
「え、相手チーム…おにぎり?!」
フィールドに立っているのは、擬人化されたおにぎりたち。三角の体に海苔のユニフォーム、手はなんとしゃもじだ。戸惑うタケルたちをよそに、おにぎりチームはウォーミングアップを始める。
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試合開始のホイッスルが鳴ると、おにぎりたちは圧倒的なチームワークでフィールドを駆け回る。
「意外と強いぞ…!」
中でもエースストライカーのおにぎり「ツナマヨ」が華麗なシュートを決めた瞬間、タケルたちは言葉を失った。
空中に高くジャンプしたツナマヨは、しゃもじの手をまっすぐ伸ばし、ボールを見事にゴールネットへ叩き込んだ。
散りゆく米粒が夕日を浴びて輝き、観客からも歓声が上がる。
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ゴール後、ツナマヨはグラウンドに落ちた米粒を一粒一粒しゃもじの手で拾い集め、自分の体に戻しながら静かにこうつぶやいた。
「俺たちにとって、どの米粒も大切なんだ。」
タケルはその姿を見て、心がざわめいた。
「俺たちはこの試合、何か大切なことを学ぶ気がする…。」
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試合終了後、タケルたちはおにぎりチームに完敗。しかし、おにぎりたちの真剣なプレーに敬意を表し、お互いに握手(しゃもじの手でタッチ)を交わした。
タケルは帰り道、ふと笑った。
「次は絶対勝つぞ。…いや、まずはおにぎりの礼儀を覚えないとだな。」
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