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雪の中の春菊の天ぷら

雪降る森の中、一匹の春菊の天ぷらが立っていました。天ぷらは、外はカリッと揚がっていて、中はふんわりと柔らかい。その姿は、まるで雪の結晶のようでした。

天ぷらは、雪を見ながら、自分のことを思い出していました。油で揚げられた時の熱さ、香ばしい匂い、そして、人の口の中に入った時の温かさ。

「私は、春菊。緑の葉っぱで、太陽の光を浴びて育ったんだ。」

天ぷらは、自分の過去を思い出しながら、雪を見つめていました。雪は、ゆっくりと降り積もり、森を真っ白に染めていました。

「雪は、私とは正反対だね。冷たくて、儚くて、でも、どこか似ている。私もここにいると常緑樹に雪がつもったようにも見える。」

天ぷらは、雪の美しさに魅了されていました。そして、雪のように、自分も儚い存在であることを感じました。

「私は、いつかは食べられてしまう。でも、その前に、この雪の世界を目に焼き付けよう。」

天ぷらは、雪を見つめながら、ゆっくりと呼吸をしました。雪の冷たさを感じながら、天ぷらは、自分の存在を噛み締めていました。

「私は、春菊の天ぷら。この雪の世界に、一瞬だけ存在した春菊の天ぷら。」

天ぷらは、そう思って、雪の中に溶けていきました。


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