見出し画像

内定を出した後に、それを撤回したり内定者を辞めさせることは、法的に非常にデリケートな問題です。内定は「労働契約」として扱われる場合が多く、内定を撤回することは「解雇」とみなされることがあります。

解雇に対しては、労働法で厳しい制約が設けられているため、企業が内定を取り消す際には慎重な対応が求められます。不当な内定取り消しが発生した場合、企業側には大きな法的リスクが生じる可能性があります。


✅内定は労働契約の成立とみなされる可能性

日本の労働法において、内定は「労働契約の成立」とみなされることが多いです。労働契約とは、労働者と企業が合意のもとに結ぶものであり、労働の提供と報酬の支払いに関する合意です。一般的に、内定は企業からの「雇用の意思表示」とされ、内定者がその内定を受け入れた時点で契約が成立したとみなされる場合があります。

このため、内定を一方的に取り消すことは、契約を破棄する行為、つまり「解雇」とみなされます。労働契約法第16条では、解雇は「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要であると定められており、企業はこれに基づいた正当な理由を提示する必要があります。単に業績の悪化や、組織再編などの企業側の都合では、内定取り消しが許されないケースもあります。

✅内定取り消しが不当解雇とみなされるケース

内定取り消しが「不当解雇」として争われるケースは少なくありません。不当解雇とは、正当な理由なく行われた解雇のことを指し、これが認められると、内定者は法的に企業に対して賠償請求を行うことができます。

たとえば、内定者が企業側に虚偽の情報を提供していたり、重大な不正行為を行った場合などは、解雇が正当とされることがありますが、単なる業績不振やコスト削減を理由に内定を取り消すことは、正当性を欠くと判断される可能性があります。これにより、内定者からの損害賠償請求や、労働審判を経て企業が不利な立場に置かれることもあり得ます。

実際の裁判例でも、内定取り消しが違法とされたケースがあります。たとえば、企業が一方的に内定を取り消した結果、内定者が他の就職先を失い、生活に大きな影響を受けた場合には、裁判所が企業に対して損害賠償を命じることもあります。このため、内定取り消しには慎重な判断が必要です。

✅内定取り消しには合理的な理由と適切な手続きが必要

内定を取り消す場合には、企業側が「合理的な理由」を持って行動することが必要不可欠です。合理的な理由とは、内定者の行動に重大な問題がある場合や、企業の経営状況が急激に悪化した場合などが該当します。しかし、単に業績の見込み違いや、内定者のパフォーマンスが予想より低いといった理由では、正当な理由として認められないことが多いです。

さらに、内定取り消しを行う際には、適切な手続きを踏むことが求められます。具体的には、内定者に対して十分な説明を行い、取り消しに至る経緯を透明にする必要があります。また、内定者との話し合いの機会を設け、互いに納得できる形で進めることが望ましいです。これらの手続きを怠ると、労働者側が不満を持ち、法的に争う可能性が高まります。

✅内定取り消しに伴う損害賠償のリスク

内定取り消しによって発生する最大のリスクは、内定者からの損害賠償請求です。内定者は、内定が取り消されたことで経済的・精神的な損害を被る場合があります。たとえば、内定を受けた後に他の就職先を辞退したり、引っ越しなどの準備を進めていた場合、それらの費用が無駄になることも考えられます。

特に内定が取り消された結果、他の就職機会を失った場合や、精神的なストレスにより健康を害した場合には、損害賠償の額が大きくなることがあります。企業が内定を取り消す際には、このようなリスクも十分に考慮する必要があります。

✅企業が内定取り消しを防ぐための対策

内定取り消しの法的リスクを回避するためには、企業側がいくつかの対策を講じることが重要です。まず、内定を出す際には、企業の事情や内定者のパフォーマンスに関する情報を慎重に検討し、確実性のある内定を出すことが重要です。また、内定後のフォローアップをしっかり行い、早期に問題を発見した場合は、内定者とのコミュニケーションを密にし、必要な対応を取ることが求められます。

さらに、内定を取り消す必要が生じた場合でも、合理的な理由と適切な手続きを守ることが不可欠です。これにより、内定者からの信頼を保ちつつ、法的トラブルを回避することが可能です。

✅あいパートナーズのサイトはこちら

社会保険労務士法人あいパートナーズは以下の業務を中心に行っています。
・労働保険・社会保険の手続き業務
・与計算業務
・労務相談
・採用支援
・企業型確定拠出年金

いいなと思ったら応援しよう!

岩本浩一@採用に強い社労士🌈社会保険労務士法人あいパートナーズ💓フォロバ100%、相互フォロー
よろしければサポートお願いします。会社に役立つ情報を書いていきます。