独自路線を進む”僕の”砥部焼 陶房Kibi 梶原英佑
こんにちは!note更新担当のたぬ子です。
砥部焼の窯元が集まる伊予郡砥部町から車で約30分。
伊予市中山町で、錆墨シリーズや、 琺瑯シリーズなど、従来の砥部焼らしさとは異なる、器や植木鉢を作っている、陶房Kibi 梶原英佑さん。
そんな梶原さんに、作品づくりのこだわりや今後の夢についてお話を伺いました。
実用性とデザインのバランス
― 作品づくりで、大事にされていることを教えてください。
基本的に全部大事にしていますが、使う方の身になって考えていますね。
それは、使い勝手だけじゃなくて、料理を盛りつけた時の感覚や、器そのものの美しさなど多岐にわたります。
お客様は、パッと見ただけでは器の欠点に気付かなくて、使った時に初めて気付くことが多いと思うんです。
でも僕らは、常に使いやすさを考えながら作ってるので、見ただけで欠点が分かるんですよ。
だから、見た目だけじゃなく使いやすさの面でも「いい器だな」と、思ってもらえる作品づくりを心がけています。
植木鉢にも同じことが言えて、どんな植物を植えてほしいのかとか、どんな風に成長してほしいのかをイメージして、制作しますね。
― では、こちらのコーヒーカップが完成するまでに、どのぐらい試作を重ねられたんですか。
形は2~3回作って、焼いての繰り返しでできたんですけど、色合いに時間がかかりましたね。
コーヒーカップの場合、持ちやすさと、持ってなくても良く見える取手にこだわっていて。実用性とデザインのバランスが難しいんですよ。
実用性だけを求めると、すごくつまらない器になってしまうので…。
いい塩梅になるように、毎回見極めています。
植物好きが作る、植木鉢
― 器のアイデアが浮かんだときは、ラフを描いてから作り始められますか。それとも、すぐ作り始められますか。
食器は、紙に描かずに作り始めますね。
その後、見た目や全体のバランスを修正する段階で、実物を紙に描き起こすようにしています。
植木鉢は、紙でデザインするところから始めますね。
― 食器と植木鉢で、スタートが違うのはどうしてですか。
うちの植木鉢は、結構細かいんですよ。
僕自身、植物が好きで。根っこがどう張ったら植物が成長するか知ってるので、その成長を促す形の鉢にしたいんですよね。
そういう機能性を考えると、深さや広がり、角度とか、いろんな箇所を綿密に設計しないといけないので、デザインから始まりますね。
自分好みの路線で勝負
― 梶原さんの作品は、従来の“砥部焼”っぽくないものが多いですが、陶芸を始められた時から、今の路線だったんですか。
最初から、砥部焼らしいものを作るつもりはなかったですね。
それでも一応、青い絵付けの作品も作っていますけど、自分が好きだと思う作品じゃないと、自信をもってお客様にオススメできないので、自分の好みを大切にしています。
― 琺瑯シリーズと、錆墨シリーズは、真逆の印象を受けるのですが、どちらもお好きなテイストなんですね。
どっちも好きですよ。
琺瑯シリーズは、琺瑯の器が好きだったので「琺瑯をイメージした器を作ろう!」と思ったのがきっかけですね。琺瑯の器でシリアルを食べる朝ごはんとか、そういうゆっくりした時間に憧れていたというのもあります(笑)
― では錆墨シリーズには、どのような料理が合いますか。
僕が、刺身好きなので「刺身載せたいな」ってのがあって、最初は和食で考えてたんですけど。
このシリーズを使ってくれている料理屋さんでは、和・洋・中幅広く使ってくれています。しかも、どんな料理にも合ってるんですよ。
― なんにでも合うというのは、使用する側からすると助かりますね。
自分で言うのもなんですけど、盛っただけでサマになるんです。
それは、うちの器というよりも、黒い器はだいたいそうですね。
料理を盛りつけた時に、黒い器は輪郭がハッキリ出て綺麗に見えるんですよ。まあ最初から、それを狙って作ったわけじゃないんですけど(笑)
作りながら、使いながら、写真撮りながら「あぁ、そうなんだ」って気付きました。
手作業が活きる柔軟性
― 錆墨シリーズのふちはどのように作られているんですか。
周りの木目のことですよね。
これは、飛鉋という昔からある技法で、器を回しながら鉋を弾かせて模様を付けています。
― では、狙って模様をつけるということではないんですね。
狙ったのと、偶然の両方ですね。
より木目に見えるように、飛鉋の深さや筋の長短をいろいろ試しました。
― 型で模様を付けているのかと思っていたんですが、1つずつ鉋で削っていたんですね。
型は、一度作ってしまうと作り直すのが大変なんです。
そもそも型を作ること自体が大変なので、型を作った後に「ここ、もっとこうした方が良かった」となっても、妥協しないといけないんですよ。
でも、手作業で模様を付けていれば「もっと良くしたい」と思った時に、その都度変更できるので、常に良い作品を作ることができます。
それに型を作るとなったら、結構お金がかかるので、生産性を重視するようになるんです。作った型で、いくつ商品が作れるかって。
そういう考えで作りたくないというのもありますね。
優しさ溢れる生き物シリーズ
― 生き物シリーズの絵付けも、ご自身でされているんですか。
そうですね。
描いているというか、和紙染めという技法で染めているんですけど。
生き物一体一体、こだわって配置しています。
例えばキリンは、睫毛が長いイメージがあるので、目を閉じて睫毛の長さを強調していたり。
クジラは、海の王者なので人間を見下ろすよな目つきで、場所も上の方に配置しています。
最初は、子ども用の食器として作っていたんですけど、そのうち大人の方も自分用にと買って行かれることが増えたので、だんだんと絵柄もバリエーションも変化していってますね。
― では柄以外に器の大きさなども、お子さん向きなんですか。
お子さんの使いやすさも考えていますが、離乳食を食べさせるお母さんの使いやすさも考えて作りました。
離乳食を食べさせる時って、お子さんを抱っこしていたりして、片手で食べさせることがあると思うんですけど、器の内側に厚みのあるふちを作ることで、そういう状況でも最後までスプーンで掬いやすい形にしているんですよ。
このふちは、玉縁と言って、砥部焼の伝統的なスタイルなんですけど、スプーンで使うって発想をみんなしてないと思うんですよね。
それまでの作品で玉縁を使っていたので、スプーンで最後まで掬いたいと思った時に「玉縁が使える!」とひらめきました。
仲間を集めてイベント開催
― 今後、愛媛でやっていきたいことを教えてください。
今後というか、今も突き進んでいるだけではあるんですけど、仲間を集めてイベントを開きたいですね。
今はまだ、僕がお客さんを呼ぶ力がなくて、イベントをやっている方に仲間に入れてもらっているだけなので、今後は自分からイベントをやっていきたいです。
絵しりとり そらまめ ⇒ め○○
持参したマジック以外にも、ボールペンや筆ペンで、たくさん描きこんでくださいました。
このポーズも、しりとりのヒントです!
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