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独自路線を進む”僕の”砥部焼 陶房Kibi 梶原英佑

こんにちは!note更新担当のたぬ子です。

砥部焼の窯元が集まる伊予郡砥部町から車で約30分。
伊予市中山町で、錆墨さびもくシリーズや、 琺瑯ほうろうシリーズなど、従来の砥部焼らしさとは異なる、器や植木鉢を作っている、陶房Kibi 梶原英佑かじわらえいすけさん。
そんな梶原さんに、作品づくりのこだわりや今後の夢についてお話を伺いました。

[プロフィール]
■氏名
 陶房Kibi 梶原 英佑(かじわら えいすけ) 
■ジャンル
 陶芸
■連絡先
 住所:〒791-3201 伊予市中山町佐礼谷甲414-1
 Tel:090-5278-2492 Fax:089-968-0201
 Mail:eisuke.kj1031@gmail.com
■経歴
 2007年に砥部焼 千山入社。2017年に退社し、地元中山町にて陶房Kibi築窯。
 作品は、食器やインテリア陶器(植木鉢)など多岐にわたるが、一貫して、ずっと触れていたいと思えるような、その人にとってお気に入りのものを作っていきたいと思っています。
■SNS
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 ・Instagram

実用性とデザインのバランス

― 作品づくりで、大事にされていることを教えてください。

 基本的に全部大事にしていますが、使う方の身になって考えていますね。
 それは、使い勝手だけじゃなくて、料理を盛りつけた時の感覚や、器そのものの美しさなど多岐にわたります。
 お客様は、パッと見ただけでは器の欠点に気付かなくて、使った時に初めて気付くことが多いと思うんです。
 でも僕らは、常に使いやすさを考えながら作ってるので、見ただけで欠点が分かるんですよ。
 だから、見た目だけじゃなく使いやすさの面でも「いい器だな」と、思ってもらえる作品づくりを心がけています。
 植木鉢にも同じことが言えて、どんな植物を植えてほしいのかとか、どんな風に成長してほしいのかをイメージして、制作しますね。

― では、こちらのコーヒーカップが完成するまでに、どのぐらい試作を重ねられたんですか。

インタビュー前にコーヒーをいただきました。
(質問のコーヒーカップは、左手前のもの)

 形は2~3回作って、焼いての繰り返しでできたんですけど、色合いに時間がかかりましたね。
 コーヒーカップの場合、持ちやすさと、持ってなくても良く見える取手にこだわっていて。実用性とデザインのバランスが難しいんですよ。
 実用性だけを求めると、すごくつまらない器になってしまうので…。
 いい塩梅になるように、毎回見極めています。

植物好きが作る、植木鉢

― 器のアイデアが浮かんだときは、ラフを描いてから作り始められますか。それとも、すぐ作り始められますか。

 食器は、紙に描かずに作り始めますね。
 その後、見た目や全体のバランスを修正する段階で、実物を紙に描き起こすようにしています。
 植木鉢は、紙でデザインするところから始めますね。

― 食器と植木鉢で、スタートが違うのはどうしてですか。

 うちの植木鉢は、結構細かいんですよ。
 僕自身、植物が好きで。根っこがどう張ったら植物が成長するか知ってるので、その成長を促す形の鉢にしたいんですよね。
 そういう機能性を考えると、深さや広がり、角度とか、いろんな箇所を綿密に設計しないといけないので、デザインから始まりますね。

自分好みの路線で勝負

― 梶原さんの作品は、従来の“砥部焼”っぽくないものが多いですが、陶芸を始められた時から、今の路線だったんですか。

 最初から、砥部焼らしいものを作るつもりはなかったですね。
 それでも一応、青い絵付けの作品も作っていますけど、自分が好きだと思う作品じゃないと、自信をもってお客様にオススメできないので、自分の好みを大切にしています。

琺瑯ほうろうシリーズと、錆墨さびもくシリーズは、真逆の印象を受けるのですが、どちらもお好きなテイストなんですね。

 どっちも好きですよ。
 琺瑯シリーズは、琺瑯の器が好きだったので「琺瑯をイメージした器を作ろう!」と思ったのがきっかけですね。琺瑯の器でシリアルを食べる朝ごはんとか、そういうゆっくりした時間に憧れていたというのもあります(笑)

― では錆墨シリーズには、どのような料理が合いますか。

 僕が、刺身好きなので「刺身載せたいな」ってのがあって、最初は和食で考えてたんですけど。
 このシリーズを使ってくれている料理屋さんでは、和・洋・中幅広く使ってくれています。しかも、どんな料理にも合ってるんですよ。

― なんにでも合うというのは、使用する側からすると助かりますね。

 自分で言うのもなんですけど、盛っただけでサマになるんです。
 それは、うちの器というよりも、黒い器はだいたいそうですね。
 料理を盛りつけた時に、黒い器は輪郭がハッキリ出て綺麗に見えるんですよ。まあ最初から、それを狙って作ったわけじゃないんですけど(笑)
 作りながら、使いながら、写真撮りながら「あぁ、そうなんだ」って気付きました。

手作業が活きる柔軟性

― 錆墨シリーズのふちはどのように作られているんですか。

 周りの木目のことですよね。
 これは、飛鉋とびがんなという昔からある技法で、器を回しながらかんなを弾かせて模様を付けています。

本来は、焼く前の柔らかい状態で行う工程です。
今回はインタビュー用に、焼いた後の器で説明いただいています。

― では、狙って模様をつけるということではないんですね。

 狙ったのと、偶然の両方ですね。
 より木目に見えるように、飛鉋の深さや筋の長短をいろいろ試しました。

― 型で模様を付けているのかと思っていたんですが、1つずつ鉋で削っていたんですね。

 型は、一度作ってしまうと作り直すのが大変なんです。
 そもそも型を作ること自体が大変なので、型を作った後に「ここ、もっとこうした方が良かった」となっても、妥協しないといけないんですよ。
 でも、手作業で模様を付けていれば「もっと良くしたい」と思った時に、その都度変更できるので、常に良い作品を作ることができます

 それに型を作るとなったら、結構お金がかかるので、生産性を重視するようになるんです。作った型で、いくつ商品が作れるかって。
 そういう考えで作りたくないというのもありますね。

優しさ溢れる生き物シリーズ

― 生き物シリーズの絵付けも、ご自身でされているんですか。

 そうですね。
 描いているというか、和紙染めという技法で染めているんですけど。
 生き物一体一体、こだわって配置しています。
 例えばキリンは、睫毛まつげが長いイメージがあるので、目を閉じて睫毛の長さを強調していたり。
 クジラは、海の王者なので人間を見下ろすよな目つきで、場所も上の方に配置しています。
 最初は、子ども用の食器として作っていたんですけど、そのうち大人の方も自分用にと買って行かれることが増えたので、だんだんと絵柄もバリエーションも変化していってますね。

― では柄以外に器の大きさなども、お子さん向きなんですか。

 お子さんの使いやすさも考えていますが、離乳食を食べさせるお母さんの使いやすさも考えて作りました
 離乳食を食べさせる時って、お子さんを抱っこしていたりして、片手で食べさせることがあると思うんですけど、器の内側に厚みのあるふちを作ることで、そういう状況でも最後までスプーンで掬いやすい形にしているんですよ。
 このふちは、玉縁たまぶちと言って、砥部焼の伝統的なスタイルなんですけど、スプーンで使うって発想をみんなしてないと思うんですよね。
 それまでの作品で玉縁を使っていたので、スプーンで最後まで掬いたいと思った時に「玉縁が使える!」とひらめきました。

仲間を集めてイベント開催

― 今後、愛媛でやっていきたいことを教えてください。

 今後というか、今も突き進んでいるだけではあるんですけど、仲間を集めてイベントを開きたいですね。
 今はまだ、僕がお客さんを呼ぶ力がなくて、イベントをやっている方に仲間に入れてもらっているだけなので、今後は自分からイベントをやっていきたいです。

絵しりとり そらまめ ⇒ め○○

持参したマジック以外にも、ボールペンや筆ペンで、たくさん描きこんでくださいました。
このポーズも、しりとりのヒントです!


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