みんなでため池を守っていくことの到達点と限界
これまで「農家が減ってきて,ため池の管理が困難になってきてる。みんなで守っていこう!(=ため池管理における市民参画)」という活動が活発におこなわれており,その結果,ポジティブな影響も生まれていることを紹介しました(詳しくは以下の投稿へ)。
今回は,まとめとして,ため池管理における市民参画の到達点と限界について書いていきたいと思います。その前にまず,主体ごとの作業とその変化についてみていきます。
1. 主体ごとの作業とその変化
以下の図は,作業内容と作業主体の関係性を,作業の専門性や参加する人数(あくまでもイメージです)を関連づけて表しています。またそれが時代の流れとともに,どのように変化したのかを表しています。
かつて,「行政・専門家」はため池や施設の補修,管理組織である「農家(役員)」は水やお金の管理,設備の点検,また近隣の「農家・住民」とともに草刈りや水路清掃などの作業に従事していました(図3,点線の三角)。
しかし,農家が減少し,従来通りの維持管理が困難になってきました(図3,三角の形が細くなる)
そのため,みんなで守ってくために「ため池協議会」が設立され,市民参画が促されました。そして市民は,清掃活動や交流・親水イベントに参加し,ため池に触れる機会が多くなりました。
2 . 到達点と限界
市民がため池に触れる機会が多くなり,ため池管理に関わる裾野は確実に広くなってます。その結果として,先述したようなポジティブな影響も生まれています(=到達点)
しかし,上の図にみられるように,市民が従事している作業は,ため池の管理作業のなかでもごく一部に限られています。
もちろん,地域よっては様々な工夫がなされ,市民が草刈りなどの作業に参加するといった事例もみられます。
ただし,その参加の仕方は限定的であり,これまで管理組織が担っていた作業を,市民が代替するには限界がみられるといえます。
なぜこのような限界がみられるのでしょうか。
この点については,また後ほど。
文責:柴崎浩平