道標
思い出なんて、今は、誰にも話したくない。それでも、どこかに書いておきたい。
目の前の状況がさっぱり理解できない。本当に意味がわからない。点と点が全く線を結ばない。何をしていても、何もしていないような気分になってくる。全てのことは風のように体を通り抜けるばかりで、それ以上何も影響を及ぼさない。
どうやら、恩師が亡くなったらしい。
どうしても理解できない。友人から連絡があったが、それを理解することができなかった。本当に、悪趣味な冗談を言う奴だなと思った。腹がたったから電話した。説明を聞いた。説明を聞いても何もわからなかった。友人から聞かされる話はどれも耳を通り抜けるばかりで、何の実感も喚起しない。
小学校のグループで通話した。多分、みんな同じ気分だったと思う。悲しみ、というより、混乱。まだ若かった。まだまだ若かった。また普通に会えるものだと思っていた。地元に帰ったら連絡しようと思ってた。もしかしたら、普通に電話に出るんじゃないかとさえ思う。きっとそうだと思う。
なりふり構わず生きててほしかった、そう思うのは、今となっては生きている人間のエゴでしかない。そこに何があったか、どんな感情が、葛藤があったかなんて、何一つ想像できない。どんな思いで、なんて今更知る手立てなんてない。でも、先生のことだから、自分の人生に一本筋を通したんだと思う。
その生き様を、忘れない。
こんな時、無神論者は辛い。唯物論者は辛い。
一人で夜を越えることができなかった。何をしても、何もしていないような気がした。ふと思いついて、バーに行こうと思った。バーカウンターの中には、いつものように同居人がいた。
以前、同居人は家にあるバーカウンターでギムレットを作ってくれた。同じ人が作るにしても、オーセンティックバーでそれを味わってみたいと思った。同居人は、気合を入れてシェイクしてくれた。美味かった。
たまたま、流しがビートルズを歌っていた。英語はめちゃくちゃで所々何をいっているのかわからなかった。歌詞も間違っていた。『Yesterday』本来ならば
であるべきところを、「Why she has to go」と歌っていた。でも、今の気分は、むしろこっちの方が近かった。
Why she has to go…
Why she has to go…
Why she has to go…
I don't know …
今、書いてる論文、読んでほしかったな。
俺、今こんなことやってるんだよ、小学校の頃から成長したんだよ、って知ってほしかった。
今からちょっと、落ち込むかもしれないけど、でも、書き終わったら読んで欲しいな。