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連載『ロマンスはカイロにて』 #1 ダハブへの逃避行



大学3回生の冬休み。寒さの厳しいアレクサンドリアを脱して、「恋するダハブ」という異名があるリゾート地に逃避行した。そこでの出会いと束の間の日常を描く。




アレクサンドリアを出発した私は、バスに揺られていた。窓にはひたすら夜の荒野が写っている。オフシーズンだからかガラガラなバスの車内は、冬だというのにガンガン冷房がかかっており、とても眠れるような状況ではなかった。私はリュックからコートを引っ張り出してそれを頭からかぶり、携帯でラジオを聴き始めた。

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大学の冬休みを利用し、アレクサンドリアにある語学学校でアラビア語を勉強した。理由はいくつかあるが、せっかくの留学中なのにあまりこれまでアラビア語に触れる機会がなかったということが挙げられる。留学先の大学は、ニューカイロという高級住宅地にあり、そこにはほとんど富裕層しか住んでいない。そのため大学内では英語が通じてしまうし、レストランやスーパーでも大概英語だけでなんとかなってしまう。私はせっかくエジプトに留学してるんだから現地で話されている言語を学びたいと思い、冬休みを利用して語学学校に通うことにした。



アレクサンドリアの路面電車。冬は雨がよく降る。


結果から言うと語学学校での生活で、ほとんどアラビア語ができるようにならなかった。英語、中国語をまがりなりにも勉強した経験から少しは新しい言語を学ぶ力がついているだろうという自惚れていた。そんな小さな自尊心はアラビア語という未知の言語にいとも簡単に打ち砕かれた。フラストレーションが頂点に達し、私は休暇を必要としていた。

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ダハブは旅人たちから沈没地と呼ばれている。沈没とは旅人の用語で、旅を中断し一つの土地に比較的長い期間滞在することを指す。長い旅の日々で摩耗した精神と肉体を、物価が安く過ごしやすい気候の土地で回復し、また次の旅へと向かっていく。疲れた私が英気を養い、次のセメスターに備えるために最適な土地である気がした。


また、ダハブには「恋するダハブ」という異名がある。ダイビングを通じて男女が出会い恋に落ちるのか、はたまたダハブには何か特別な空気感があるのだろうか。真偽は定かでは無い。私は密かに「何かあるんじゃあなかろうか」という思いを胸に、語学学校最終日の前日、名物の海老のフライを食べながらダハブ行きを決定した。


アラビア語で海老のフライは「ガンバリマクリ」という。アレクサンドリアではそんなに頑張れなかったのが心残り。


#2へと続く



(正直書き切れるかわかりません。みなさまのいいねとコメントと個人的な連絡などが力になります。感想やフィードバックなどなんでもいいので教えてくだされば幸いです。)

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