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「麗しき島々」収録曲解説 11.まつばんちゃ(喜界島)
既出の屋久島古謡「まつばんだ」に似た題名だな、と思われた方もいるかもしれません。
「まつばんだ」の音源を朝崎郁恵先生に聴いていただいた時の事です。
「これは、喜界島のおばあちゃんが歌ってくれた歌に似ている」と言われて、その場で突然思い出して数節歌ってくださいました。
喜界島と、朝崎先生が住んでいた加計呂麻島は遠いですが、たまに孫に会いに来てくれた時に、枕元で歌ってくれていた歌が確か「まつばんちゃ」だったと思うとのことでした。朝崎先生のお祖母様は江戸時代生まれでしたので、「まつばんちゃ」はそれよりも前から歌われていたということになります。
さらに情報が無いかと思い、島唄の研究家の方や、喜界島在住の方に「まつばんちゃ」についてご存知ないか、資料が残っていないか聴いてみましたが特に手がかりが見つからず、もしかしたら伝承者は朝崎先生だけかもしれないということになりました。
最初に朝崎先生の「まつばんちゃ」を聴いてから9年になります。
屋久島と奄美がつながった瞬間の驚きは今でも忘れられません。
この曲をどう解釈するか、どう表現するか…
長い時間を掛けて温めてきた曲です。
歌詞は八月踊り歌や島唄と同じく、その場その場にふさわしいものを付けて歌うと良いとのことで、
「月に願いを立てて、昇る太陽に手を合わせ、産んでくれた親の長生きを願う」という歌詞に、親と師匠への心からの気持ちを表現しました。
まつばんちゃ
喜界島古謡
きゅうぬほこらしゃや 何時よりむまされぃ
いてぃむ今日ぬ如(ぐとぅ)にあらちたぼれ
月に願立ててぃ 昇る太陽(てぃだ)拝でぃ
産ちゃる親加那志ぬ 百歳世(ひゃくさゆ)願お
千歳古松ぬ 緑葉ぬ下(しゃー)に
亀が歌すぃりば 鶴が舞ゆり
江草啓太:arrangement,piano
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