ファインダーを覗かない
昔々。
初代GR DIGITALを使い始めて、しばらく経ったころ。
自分の撮影スタイルが「カメラの背面モニタを見ながら撮る」のに向いていると気づいた。
当時は、メーカー各社のデジタル一眼レフシステムが花開きつつあった時代で、しかし、光学的な機構はフィルムカメラを踏襲している部分が多かったから、ファインダーを覗いて撮影するのが当たり前だった。液晶のドット数や色再現は今よりはるかに劣っていたし、一眼レフカメラでのライブビュー撮影は、ようやく一部の機種で実現したばかりだった(富士フイルムFinePix S3 ProとオリンパスE-330が先駆けと記憶している)。
ファインダーのトンネルを片目で覗き込むとき、レンズが映し出す世界への没入感と、被写体への集中力が生まれる。
対して、背面モニタを見ながらの撮影では、カメラをさまざまな角度に動かせる軽快さが心地よいし、何より自分の意図した感覚を素直に表現できるように僕には思えた。油断するとピント合わせがアバウトになりがちな弊害はあるが、メリットの方を重視したい。
ある著名な写真家が「背面モニタを使った撮影は、両目で全体像を確認できるので、構図がしっかり取れる」と解説しているのを読んだことがあって、確かにこの効能も大きい。
その後、リコーGXRや、シグマDP2 Merrillといった、ファインダーを持たないカメラを好んで使用し、多くの作品を作ることができた。
他方、「一度くらいコンベンショナルな35mmデジイチを使ってみよう」と考えて手を出したときは、(それが唯一の原因ではないにしろ)思いがけないスランプに陥りもした。
現在は、これまで書いた記事のとおり、シグマfpとリコーGRⅢxという、両方ともファインダーのないカメラで撮影に勤しんでいる。
さて、世の中にスマートフォンが普及して以降、写真を撮るときに「ファインダーを覗かない」のは、すっかり〈世界標準〉となった。
それどころか、カメラで写真を撮る人は、一種の物好きな存在にすらなろうとしている。動画も写真を凌駕する勢いだ。
時代の変化は、早い。
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