杜に漂う気配
ほかの国や地域がどうなのかはわからないが、日本で暮らしていると、至るところに神仏が祀られているのに出くわす。あらためて意識し直すと、驚くほど。
中でも、綺麗な水が湧いていたり、巨岩が顔を覗かせたり、その他いわく言い難い風が渦巻いている場所には、必ずと言ってよいくらい古い神や仏が鎮座されていて、じっと佇めば、昔の人々の捧げた想いがほのかに伝わってくるようだ。
そうした信仰が根づいた背景には、日本列島が地質の変化に富んでいたり、植生が豊かだったりすることに、要因の過半を求められるだろう。
人と、人が棲む土地は、切っても切り離せない。
もちろん、人間の想いによって自然が動かされることはない。しかし、自然は、人間の行動如何によって複雑に変化してゆく。
行動が何から導かれるかを考えたとき、自然という名の神や仏に祈りを捧げることから始めた古人は、決して無知蒙昧ではなかったはずだ。