写真展のご縁に感謝 その2
noterの「popo」さんが、過日の写真展「二つの部屋」について、見事な紹介記事を投稿してくださいました。
優しげなpopoさんの、しかし極めて鋭く的確な観察眼と審美眼を通じ、写真展の姿を想像して(実物をご覧になられた方は思い返して)いただければ幸いです。
popoさんの記事は、
の一文で始まります。
これは半分は本当で、会期中、何人かの方から、
「(個々の作品の)タイトルはないんですか?」
と訊かれました。
ないんです。
「二つの部屋」と名づけた全体タイトルの下、二つの展示室に跨がるインスタレーション展示を感覚的かつ思考的に楽しんでもらおうというのが、この《写真展》の趣旨でした。
そして、写真プリントを(直にあるいは額装して)床に配置するといった手法面も含め、鑑賞者の方々の多くが抱いているであろう、既存の写真や写真展に対する固定したイメージを、実体験を介して揺るがすこともまた、目的の一つとしていたのでした。
ただ、キャプション(専門用語では「ステートメント」とも呼ばれます。展示会や作品集の概要説明のこと)は一応、会場に掲示してあったんですよ。
こんな感じです。
とはいえ、これを読んだだけでは正直、
「わかったような、何だかはぐらかされたような」
印象を受けるのではないかと思います。
ぼく自身、「とっかかり」のようなものが皆無では余りに不親切だろう程度の認識から掲示した文章で...…いや、もちろん真剣に書いてはいるんですよ。けれども、今回の展示に含まれている意味(及び意味の形をとらないもの)をきちんと説明し、理解してもらおうとすればするほど、ステートメントは長くなり、込み入り、ますますわかりづらくなってゆくのは目に見えています。
よって、上の文章は、本当に「とっかかり」としてそこにありさえすればよいと判断し、会場の端っこの壁にさりげなく貼りつけました。フォントもあえて、細く目立たないものを選んで。
popoさんの記事に関して、もう一つ。
展示室1の写真(作品)群を指して、
「グラフィックデザイン」
と明言していらっしゃる。
これはまさしく卓見で、今回の《写真展》は、写真展と銘打っているけれども、実際には写真展ではないんですね。
もちろんストレートなタイプの写真も展示していますが(展示室2)、それ以外にも写真を基にしたグラフィックであったり、立体物の支持体と組み合わせたり、詩や音楽と一体化していたり、何より会場である福島市写真美術館の大正期建築の胎内にあって、天候や時刻に従って移り変わる光の明暗やグラデーションそれ自体が見どころであったりしたわけです。
美術館の館長がギャラリートークの総括の最後に、ぼくのことを
「写真を媒介とした現代美術家」
と評したのですが、その肩書きに異を唱えるつもりは、ぼくにはまったくないのです。