なぜ佃は詩の中で自らをグジョンセンに例えたのか?『さよなら私のクラマー』
『さよなら私のクラマー』を読んでずっと疑問に思っていたことがあります。それは、第2巻で久乃木学園のDF・佃 真央(つくだ まお)が詠んだ詩の内容です。
佃は、大塩君という男性に片想いをしていました。
大塩君を遠くから眺める佃は、趣味であるポエムで自分の想いを表現します。
その詩の全文を書きだします。
あなたは平八郎
私はグジョンセン
木漏れ日は私たちを照らすミラーボール
渡せない特性ドリンク
手を伸ばしても届かない
私はただ見つめるだけ ジャストルッキング
平八郎 あなたの汗をなめたい
ここは恋の味スタ…
叶わぬ恋に悩む乙女らしい内容です。しかし、この詩の内容について1年前からずっと疑問に思っていることがあります。
なぜ佃は、自分のことを「グジョンセン」に例えたのでしょうか?
1年間考え続けても完全な答えは出ていないのですが、自分なりの答えをまとめていきます。
佃 真央について
まずは情報を整理していきましょう。
佃 真央(つくだ まお)は、高校女子サッカー日本一のチームである久乃木学園に所属しています。
1年生ながらスタメンの座をゲットしており、世代別の代表にも選ばれています。
彼女のポジションはサイドバック。
そんな彼女の趣味は、ポエムを詠むことです。
大塩君とは?
2巻にだけ登場したイケメンキャラです。
ちなみに、佃と大塩君は中学からの同級生。
大塩君は佃には興味がないようで、佃の一方的な片想いのようです。
では、グジョンセンとは?
チェルシー(2000~2006年)やバルセロナ(2006~2009年)で活躍した元アイスランド代表のサッカー選手です。チェルシーの黄金期を支えた有名な選手です。
金髪が特徴的ですね。
ポジションはFWもしくはMF。彼のプレーシーンはこちら。↓
wikipediaによると、「アシスト能力も高く、プレミア随一」とのことです。
平八郎は大塩平八郎のことでしょう
大塩平八郎は、19世期の日本で苦しむ庶民のために幕府に武装蜂起(大塩平八郎の乱)した人物です。武装蜂起は幕府に鎮圧されてしまい、最後は自決しました。
これらを踏まえてもう一度詩を確認しましょう。
あなたは平八郎
私はグジョンセン
木漏れ日は私たちを照らすミラーボール
渡せない特性ドリンク
手を伸ばしても届かない
私はただ見つめるだけ ジャストルッキング
平八郎 あなたの汗をなめたい
ここは恋の味スタ…
大塩君のことを「平八郎」と詠んだのは分かります。名前つながりで大塩平八郎を連想したのでしょう。
ではなぜ佃は、片想いの詩を詠む時に自分のことを男性であるグジョンセンに例えたのでしょうか?
憧れのサッカー選手だから?
佃はグジョンセンに憧れていたのでしょうか?だから詩でも名前を使った?
ちなみに、両者にあまり共通点はありません。
強いて言えば、「アシストが得意」が共通点でしょうか?
もちろん共通点がないとはいえ、グジョンセンはスタープレーヤーなので佃が憧れていたとしても不思議ではありません。
しかし、憧れているからといって、片想いの詩を詠む時に自分のことを男性プレーヤーにたとえるでしょうか?いまいち納得がいかないのです。
もう少し別の切り口でも考えてみましょう。
名前が関連?
大塩くんを「平八郎」と詠んだのは名前が由来しています。
であれば、グジョンセンも名前繋がりで登場させたのではないでしょうか?
もしかしたら「佃真央」というワードをグジョンセンの母国語・アイスランド語に翻訳したら、グジョンセンが連想できるのかもしれません!
…しかし、何一つ分かりませんでした。
「佃真央」の連想ワードをアイスランド語に翻訳したり、グジョンセンの本名を日本語に訳してみましたが、さっぱりです。
答えがあるのかだんだん不安になってきました。
片想いの象徴としてのグジョンセン?
行き詰ったので、もう一度詩を詠み返してみましょう。
あなたは平八郎
私はグジョンセン
木漏れ日は私たちを照らすミラーボール
渡せない特性ドリンク
手を伸ばしても届かない
私はただ見つめるだけ ジャストルッキング
平八郎 あなたの汗をなめたい
ここは恋の味スタ…
中盤で「手を伸ばしても届かない」というフレーズが出てきます。
ということは、成就しない片想いの象徴としてグジョンセンを登場させたのではないでしょうか。
そこで、グジョンセンの恋愛事情について調べてみました。
グジョンセンは結婚しており、4人の息子がいます。その内、3名はなんとサッカー選手。次男はレアル・マドリードの下部組織に加入しています。次男がスペインに移住する際には、家族みんなで一緒に移住したそうです。なんと素敵な家族!
(↑グジョンセンの息子です。イケメン…)
「グジョンセン=片思いの象徴説」は無さそうです。
大きな迷路に迷い込んだ気分です。この先に答えはあるのでしょうか?
2人の関係性?
最後の説です。今までありえないと思って考えていなかった視点です。それは、2人の関係性です。
佃はこう考えているのかもしれません。
「私と大塩君は今は離れているけれど、いつの日か結ばれる運命。そう!大塩平八郎とグジョンセンのように!」
…もう自分が何を書いてるのか分からなくなってきました。
大塩平八郎とグジョンセンが運命の相手ってどういうことなんでしょうか?
佃たちの世界には、『平八郎が転生したらグジョンセンのお嫁になってた件』みたいな転生ものの小説でもヒットしてるんでしょうか?
小説『平八郎が転生したらグジョンセンのお嫁になってた件』
平八郎「もはや武装蜂起もこれまで、、、。無念!」
刃を自らの腹に刺す平八郎。遠のいていく意識の中で思い返されるのは、共に武装蜂起した村民たちの顔。平八郎は平和を願いながらその人生を終えていった…。
ハッ!と目を覚ますとそこは、モダンな家屋の布団の中。隣には見知らぬ金髪の男が寝ている。ここはどこだ?困惑する平八郎。立ち上がってみると驚いた。自分の身体が女性になっている!
平八郎「なにごとじゃ?ワシはなぜ女体になっている?」
『平八郎が転生したらグジョンセンのお嫁になってた件』第1話、「150年の時を超えた平八郎。ワシがサッカー選手のお嫁じゃと!?」
こんな小説が作中の世界ではヒットしているのかもしれません。分からなすぎてもうこれが答えに思えてきました…。
結論
Q、なぜ佃は自らをグジョンセンに例えたのか?
A、『平八郎が転生したらグジョンセンのお嫁になってた件』という小説がヒットしており、佃はこの小説を読んでいた。
小説の中で平八郎とグジョンセンが運命の相手であることを知った佃は、自らの詩を詠む時にも、大塩君を「平八郎」、佃を「グジョンセン」に例えて詠んだのではないか。
以上が、1年間考え続けた私なりの答えです。
…1年間いったい私は何を考えていたのでしょうか?
詩の内容を、そしてグジョンセンと大塩平八郎のことを、ずっと考え続けてきた2020年でした。
私はこの1年間に、何を得て、何を失ったのでしょうか?
欧州サッカーに詳しくて、乙女心を理解している『さよなら私のクラマー』読者の方。なぜ佃は自分のことをグジョンセンに例えたのでしょうか?
お分かりの方がおられましたら、ぜひ教えてください。
追記
記事を読んでくださった方々から、様々な説を教えていただきました!
●名前関連説 / 大好物さん
・グジョンセンのポジション ⇒ セントラルミッドフィルダー
・佃の名前 ⇒ 真央 ⇒ (英語にすると)セントラル
平八郎と同じく、名前が関連している!とってもありえそうです!
●アイスランド説 / みやおさん
「愛すランド(アイスランド)の英雄として、私はあなたを待っています。一緒にこの地で同じ時を過ごしましょう。」
乙女らしいメタファー!ありえそうです!
●グジョンセンの親子の運命を例えた説 / もり氏さん
アルのライター陣の中でキャプテン的存在であるもり氏さんは、なんと記事にしていただきました。
グジョンセンとその父親の数奇な運命を紹介しながら、グジョンセン親子の距離感と自分を重ねたのではないか?という説を唱えられました。
すごい考察!もうこれが真実な気がします!
みなさんのお力で一瞬にして真相に近寄れた気がします。『平八郎が転生したらグジョンセンのお嫁になってた件』ってなんだよって思い始めました…。
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