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【artwork】dysfreesia+mihau - pool in the bottle EP
こんにちは。ミヤオウです。
今回は2024年の10月にリリースされたdysfreesia+mihau による 'pool in the bottle EP' のアートワークについて書いていきたいと思います。
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モダン・フォークバンド ・dysfreesia+mihau の "過去三部作EP" が2024年10月20日にリリースされました。
過去音源集「MOYA EP」、セルフリミックス集「trystero EP」、ライブ盤「pool in the bottle EP」が "過去三部作"として同時リリースされ、そのなかの「pool in the bottle EP」のジャケット・アートワークをミヤオウが制作しました。
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2023年12月17日に桜台Poolにて開催されたツーマンライブ「KLEIN.」の音源集である「pool in the bottle EP」。実は以前このライブのフライヤーを私が制作させていただいたこともあり、のちにdysfreesiaの平野さんからEPアートワーク制作の依頼がありました。
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”KLEIN.”は「クラインの壺」をテーマに、表裏の境界や関係性をツーマンライブというかたちに置き換えたコンセプチュアルなライブイベントでありました。アートワークでは、メインの壺の描写とともに、空間における内外の関係性を開口部というロケーションで表現しました。
開催されたライブハウス・桜台Poolは、玄関から地下に降りていき、吹き抜けの空間に白灰色の防音マットが淡々と設えてある、どこか避難所というか、倉庫というか、いわゆるライブハウスの空間性とはまた違う空気感が漂う場所でした。そこでポストロックバンドとモダンフォークバンドの対を観たのでした。
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それから少し経ったころ、平野さんからEPのアートワークについてご相談がありました。名前は「pool in the bottle EP」です、と聞いて、桜台のあの空間と時間を思い出しました。たしかに、bottleのなかに居たような、揺蕩う空気感と音楽、その風景をタイトルから感じました。
それからEPのためのアートワーク制作を始めました。平野さんがBabera Recordsというレーベルを運営していることから、バベルの塔の内部にある、天窓のあるプールを作ってみたり、タイル張りの空間に水が張っている、まさにプールのイメージしたものなどを作りました。そうしたいくつかのラフ案から、「ある部屋」の案が良いのではないかということで話は進んでいきました。
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夕陽の差し込む、とてもシンプルな部屋です。奥の壁には楕円の鏡がかかっており、その手前にクラインの壺と花瓶が机の上に置いてあります。
他の案はある意味直接的にプールやボトルのイメージを表現していたのですが、この案は間接的なイメージとして浮かんできた空間でした。ほかの案よりも日常的なイメージ。もうひとつ、この部屋の真ん中に扇状に五枚の鏡が置いてあるバージョンもお見せしました。それが最終的なアートワークに至る画像です。
「五枚の鏡」はこのアートワークにとってとても重要な部分です。
この制作を始める前、私はポール・オースター(1947-2024)作「孤独の発明」を読んでいました。私が印象に残ったのは文庫版の扉絵の写真。オースターの父が複数並ぶ鏡のそれぞれに映っている、というその写真は、この小説の核となるようなものでした。
そのあと平野さんの家に伺ったとき本棚を見ていたら、そこに「孤独の発明」が置いてあり、平野さんからお話を聞き、彼と彼の作品を敬愛されていることを知りました。この偶然のつながりを感じると同時に、印象的であったあの鏡のイメージがそれからずっと頭に浮かび続けていたので、アートワークに取り入れることを考えました。
そして様々な調整を重ね、アートワークができました。
最後に、平野さんから「部屋のドアを開けてほしいのです」というリクエストがありました。「ポール・オースターのお父さんを閉じ込めたくないなと思いました」と。私はその希望を受け取り、ドアを少し開きました。
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'KLEIN.'、桜台poolという空間と時間、そして「孤独の発明」。分かりやすく繋がっているようには見えないかもしれませんが、それぞれが揺蕩いながら関係し、暫定的に、決定的にかたちが現れる。このプロセスが制作の魅力であり、ひいては人生の魅力なのではないかと思います。
dysfreesia+mihauによる"過去三部作EP"は現在ストリーミング可能です。
ぜひそれぞれのEPをアートワークとともにお聴きいただけたら幸いです。